ロシア極東の経済状況-県産品販路拡大の新規市場としての可能性

開催日 2003年7月17日
開催地 三条・燕地域リサーチコア
講師 ロシアン通商㈱代表取締役 加藤雅裕
日本ロシア経済委員会事務局長 杉本侃
報告書 ERINA BUSINESS NEWS Vol.39

ロシヤン通商(株) 代表取締役 加藤雅裕

ロシアの政治的混乱や狂乱物価、不正の横行の時代はすでに終焉しました。ロシアの対外貿易高、ロシアと貿易する企業の数、ロシア国内の外資系企業数を考えると、ロシアは今後10年、毎年5%以上の成長率で成長して行くと思います。また、商品単純売買方式のみの日ロ貿易の時代も終わりました。これからは合弁企業や100%外資企業の形態という形の中で日本がロシア極東に進出し、或いはロシア中央の企業が日本へ進出する時代です。

ロシアは未だ典型的なトップダウンの組織です。ロシアの地元行政関係者と定期的に会い、親交を深めることが大切です。同時に、リスクと利益を公平に分配することも長期取引には必要です。ロシア側が利益を多く取ろうとし、短期の取引に終わるケースが多々あります。また、ロシア側役員に対し評価、敬意を与え、従業員と区別して高給を保証することも大切なことです。

ロシアの金融・信用保証制度は年々改善しています。利率は年々下がる傾向にあります。長期運転資金の調達方法は、ロシア側出資者の自己資金、ロシア国内投資家の投資の誘致、日本側出資者の自己資金、欧州復興開発銀行や世界銀行の融資、みちのく銀行の日本又は現地支店からの融資等があります。海外送金については、合弁企業、100%子会社なら、輸出入に対する送金も、海外からの又は海外への投融資も、決算書と納税証明書があればどこの許可も無くできます。

ロシアへの事業進出方法は、合弁会社方式では、ロシアへ工場や農地や技術を移転する方法です。リース方式では、提携するロシア企業に工場、農場、従業員を用意してもらい、それらをリースします。この方法は将来性があります。投資事業委託方式は、ロシアでの事業の経験をもつ日本企業経由で、ロシア企業の技術開発に投資します。これはハイテク産業に向いています。

ロシアでの株式会社設立は自由ですが、最低資本金の額は年毎に発表される最低月給賃金の1,000倍の額です。初期定款資本金は、200万円~300万円程度が適当です。後で増資すればいいのです。また、100%外資も可能です。合弁の場合は、日ロ双方50%ずつの出資がいいと思います。生産会社設立時の事業計画は、各州都にある経済関連の研究所に頼みます。F/S費用は約50万円~300万円程度です。F/Sで生産事業の必要性と採算性が認められないと、会社設立許可が出ない場合があります。F/Sの後、会社登記までの期間は約3ヶ月かかります。登記は地元行政政府登記所や、場合によってはモスクワの法務省や事業の関連する省で登録を行います。なお、商社やサービス産業の会社を設立する場合、F/Sは必要ありません。

会社登記の必要書類は、出資者の日本の登記簿謄本、その翻訳、日本の銀行が発行する出資者の銀行口座残高証明、その翻訳です。さらに日本の公証人役場又は在日ロシア領事館からの上記書類への認証が必要となります。

燕・三条の洋食器、調理器をロシアで販売することを提案します。良いもの、長期的に使えるものはロシアでも認識できますので、企業トップが決断し進出していただきたいと願います。合意できればトントン拍子に進みます。

日本ロシア経済委員会 事務局長 杉本 侃

ある程度の規模のビジネスは、企業が単独でリスクを抱え込むのは大変難しいことです。相手国の法律を勉強するというだけでなく、国と国との関係や、どうような安全装置があるのかというところを勉強するのが大切だと思います。

日ロ政府間の仕組みは以下の図のようになっています。

経団連の日本ロシア経済委員会は、1965年の日ソ経済委員会設立以来の民間を代表する対ソ・対ロ活動団体です。またロシア日本経済委員会は、以前はロシア政府がやっていましたが、現在は民間組織です。日本とロシア双方の機関が協力関係を結び、年に一度の合同会議を開くなどの活動をしています。

下の3つの枠を見てください。まず、森プーチンプランですが、以前の橋本プーチンプランから2000年9月、森プーチンプランとなりました。これは8つの分野で協力を進めようとうものです。8番目に書いてある地域レベルの協力というものは、森プーチンプランになってはじめて日ロ間で盛り込まれたものです。

真中の枠の日ロ行動計画は、経済に限らない6つの分野について双方の基本的な方向を位置付け、幅広い関係を築いていこうというものです。経済に関しては4番目の貿易経済分野「信頼、行動-相互利益へ」というものが該当し、これが左側の森プーチンプランを受けたものになります。

そしてさらにこれをブレークダウンしたものが、右枠の9つの協力です。1番目に置いているのが、民間が経済交流をしやすいようにすることを目的にしたものです。8番目の観光についてですが、極東における観光協力というのは重要です。観光というのはインフラに莫大なお金をかけなくても可能な部分がかなりあるということで、私共も力を入れている分野です。9番目の地域レベルの協力ですが、これは極東分科会の活動を活性化し、さらに中小ビジネスを振興しよう、地域間の経済交流をすすめようということで、協力を推進しているところです。

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日本ロシア経済委員会の取り組みの中で、日ロ間の企業ベースではなく、日ロ双方がある程度コンソーシアムを組んで検討していこうというのが、図の協力プロジェクトです。

第1次協力プロジェクトの検討は、諸般の事情から実現に至っていません

第2次協力プロジェクトではかなり多くの案件がありましたが、その中で最優先のものを決めて企業化調査までしているのですが、国家保証をロシア政府が出さないということがあって、今は止まっているのが現状です。/P>

3つめの貿易促進メカニズムは、金融メカニズムといっても良いのですが、2ステップローンについて国際協力銀行と相談をし、ロシアのVTBとの間で80億円の契約を調印しました。これは上の2つのプロジェクトが止まっていることを考えると、枠組みが実現したことは意義があります。しかし、実際の運用がまだそれほどされていないのが現状です。

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喫緊の課題として、日ロ貿易投資促進機構の設立があります。エリツィン大統領と橋本総理が会談した時に、日ロ貿易を促進するために投資会社を設立するという提案がなされました。しかし、投資ということだと、どこがお金を出すかということなのですが、この経済状況ではなかなか投資家を見つけられる状況ではありません。また、日本がロシアに投資をしないのは、お金が無いからではなく、ロシア側の条件が整わないからなので、お金以外の機能が大切ではないか-ということで、投資会社ではなく、安心して投資できるように手助けできるような組織が必要だということから、この機構の設立構想が生まれました。

これは日中投資促進機構、アメリカのBISNIS、US Commercial Service、Regional Initiative Officeを参考にしました。これらの枠組みが、政府関係機関が主体となっていることに鑑みて、日本でも政府としてやるべきものがあるのではないかということです。特に欧米は、政府と民間が一体となってやっています。日本の民間が有利になるようなロビイングをやっていくことがこの機構の重要な意義になります。政府としても民間としても、そうそう金を出せる状況ではないというので、既存のインフラを使うことが早く安く動き出せる条件ではないか思っています。

日本とロシアの間では、今年1月の小泉首相の訪ロで、日ロ行動計画ができました。また川口外相がウラジオストクに行きましたし、小泉首相もハバロフスクに行きました。サハリン1も動き出しました。こうした流れは非常に良いと思います。また太平洋パイプラインがどういう形で実現に向かっていくのかということも含めて、日ロ間は注目すべき状況にあると思います。日ロ貿易投資促進機構等を充実させ、日ロ経済関係を発展させていきたいと思います。

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