第2回全体会開催概要

2000年6月6日に新潟において、北東アジア経済会議組織委員会(以下、「組織委員会」)が開催された。組織委員会は、2000年1月に設立され たもので、今回は設立時に続く第2回目の会議であった。組織委員会は、前身の会議も含めて10年以上にわたって新潟で開催されてきた北東アジア経済会議 (以下、「経済会議」)の積み重ねを踏まえた上で、これまで以上に実質的な成果を上げることを目的として設立されたものである。具体的には、毎年の経済会 議の内容や構成を検討し、関連するテーマについて共同研究等を行うなどして会議の準備を進めることと、経済会議の結果を踏まえてその内容の実現に向けて各 方面に働きかけることなどを主な活動内容としている。(組織委員会の構成等については、ERINA REPORT Vol.33を参照のこと。)

今回の会議の主なポイントを整理すると、以下の4項目にまとめることができる。すなわち、(1)運輸・物流常設分科会の設置、(2)共同研究テー マに関する意見交換、(3)次回経済会議の開催計画の決定、(4)北東アジア地域における多国間協力の推進に関する意見交換の4項目である。以下、それぞ れの項目ごとに会議の内容を紹介したい。

まず、運輸・物流常設分科会の設立についてであるが、設立すること自体は、1月25日の第1回会議の際に決まっていた。今回はそのメンバーを確定 したものである。具体的には、組織委員会メンバーを中心に4カ国、1国際機関から計6名のメンバーを決定した。早速、翌7日に分科会会合を開催して、分科 会委員長に栢原英郎(ERINA参与、日本港湾協会理事長)を選出し、次に述べる共同研究の進め方等について議論を行って、活動を開始した。

運輸・物流常設分科会に関連して、2つのテーマについて共同研究を開始することが決まった。1つは、北東アジアの輸送回廊の動向把握である。これ については、分科会メンバーが分担して、この地域の複数の輸送回廊の動向に関して定期的にモニタリングを行い、事務局(ERINA)でとりまとめることに なった。対象とする「輸送回廊」をどうするかについては、若干未整理な部分が残り、今後整理することとなった。もう1つはデータに基づいた北東アジアの輸 送分析である。こちらも、各メンバーが分担してデータ収集を行った後、事務局が分析を行うことになった。輸送に関する研究テーマでは、単にインフラ整備の 問題としてだけ捕らえるのではなく、背後圏の経済や地域全体の貿易・投資の促進といった面までを含めた、幅広い視野からの作業が必要であろうとの意見が あった。輸送関連以外についても、北東アジアにとって重要な課題が各委員から提示された。例えば、社会開発、エネルギー、食料及び農業、貿易・投資、開発 金融、観光などである。今後、事務局を中心に、テーマごとの優先順位や参加範囲などを検討し、可能なものから実施していく予定である。

次回の経済会議は、2月8日、9日の2日間、新潟で「北東アジア経済会議2000イン新潟」として開催することが決まった。会議構成はほぼ例年の 形を踏襲している。すなわち、国内外の有識者からの基調講演及び特別講演に引き続き、テーマ別に順次パネルディスカッション方式の議論を行い、最後に総括 セッションで宣言文を採択して閉会となる。セッションのテーマとして、『北東アジアの物流ネットワーク:不連続点の解消に向けて』、『北東アジアにおける 環境産業の振興:地球温暖化防止と経済発展の両立に向けて』、『転換期の北東アジアにおける貿易・投資の促進:投資リスクの解消に向けて』及び『多国間協 力の枠組み:連携ネットワークの可能性』の4つが決まった。また、経済会議の前日2月7日に第3回組織委員会を開催すること、経済会議の関連行事として中 国東北部の食材輸入商談会などを行うことも決定された。

続いて、ミニワークショップとの位置付けで、「PECC(太平洋経済協力会議)・APEC(アジア太平洋経済協力)と北東アジア」というテーマで 意見交換を行った。ここでは、冒頭、山澤逸平委員(日本貿易振興会(JETRO)アジア経済研究所所長)から、PECC並びにAPECの成立、発展の経緯 について基調的な報告を得た。産・官・学から個人資格で参加して議論を行うPECCのの仕組みは、北東アジアの多国間協力においても有効であろうと指摘し た上で、PECC関係者に北東アジア地域をアピールすることが提案された。これを受けて、事務局では来年PECC総会を開催する中国関係者などへの働きか けを図っていく予定である。また、山澤委員の報告の中で開発資金確保の重要性が指摘されたことなどもあり、北東アジア地域における開発金融の仕組みについ て議論が展開された。趙利済委員(北東アジア経済フォーラム議長)から、北東アジア開発銀行設立構想の準備状況について報告があったほか、意見交換の中で はアジア開発銀行に特別基金を設置するアイディアがあることなども紹介された。

なお、今回の組織委員会では昼食の時間を利用して、金森久雄委員長が「日本経済の現状と見通し」について講演を行った。通常、北東アジア経済会議では日本経済について議論することは少ないだけに、参加者には好評だったように思う。

韓国並びに北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の参加問題は、依然として未解決の問題として残った。今回の会議でも、組織委員会として早期参加が可 能となるよう呼びかけを続ける方針を確認したほか、事務局であるERINAとしても参加に向けた条件整備を図っていく予定である。

全体を通してみて、各委員の積極的な姿勢が目立ったように感じられた。昨年からの準備段階及び1月の設立段階では、組織委員会の姿が今一つはっき りしないこともあってか、模様眺めという感じであった。今回は、意見交換の場面でも自ら積極的に発言を求める委員が多く、組織委員会の活動に自らの意見を 反映させていきたいとの意向が感じられた。事務局としては、こうした委員からのイニシアティブを踏まえて、可能な限り大きな成果が得られるよう、円滑な組 織運営を行う必要があると認識している。運輸・物流常設分科会の設立や共同研究テーマの決定など、具体的な成果につながる活動計画も固まり、有意義な会議 であったと思う。

(文責  ERINA研究員 新井洋史)