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第4回全体会開催概要
2001年9月3日
ハバロフスク市
要点
第1セッションでは、運輸・物流分科会の栢原委員長から、次回の経済会議に向けて北東アジア輸送回廊構想(ビジョン)づくりを進めること等、当面の活動方針の報告があった。
また、北東アジア経済会議2002イン新潟の企画については、基本的に事務局案通り了承された。検討の中で各委員から出されたコメントの主なものは、「実 業界、日本政府関係者、各県知事等の参加拡大を図ること」、「基調報告テーマとセッションの議論を整合させること」、「多国間の貿易に関する議論を行なう こと」、「フロアとの距離を近くしてフロア発言の時間も長くとること」などであった。事務局は、これらのコメントを考慮しながら会議準備をすすめることと した。
第2セッションでは、古賀、山澤、趙、ゴンボ、米川の各氏から、それぞれの多国間協力事業についての取組の説明があった。
第3セッションではイシャーエフ氏が「国家とロシア極東経済発展の見通し」と題して報告を行い、ミナキル氏の名で準備された「ロシア極東の文脈における地 域協力」と題する論文に関してスィルキン氏が報告を行った。これらに対して吉田氏のコメントとフリーディスカッションを行った。
議事概要
第1セッション
1.会議冒頭、ホストのビクトル・イシャーエフ氏(ハバロフスク地方知事)及び委員長である金森久雄氏(ERINA理事長)から開会挨拶があった。
2.事務局長である吉田進氏(ERINA所長)が出席委員及びオブザーバー参加者・来賓の紹介を行った。引き続き、新委員である羅雄培氏(韓国 元副総理)及び金立三氏(韓国全国経済人連合会常任顧問)並びに朝鮮民主主義人民共和国関係者としてオブザーバー参加した朴廣氏(朝・日輸出入商社常務) からあいさつがあった。
3.運輸・物流分科会委員長の栢原英郎氏(ERINA顧問/日本港湾協会理事長)から、北東アジア輸送回廊構想の実現に向けて、1)各回廊の改 善状況のモニタリングとそのPRによる利用促進、2)各国政府及び国際機関の協力による回廊の整備が必要であるとの考え方が示された。また、9月5~6日 に、分科会メンバーなどが参加して「綏芬河輸送回廊」の共同調査を行なうことなど、当面の活動計画が報告された。
4.平山征夫氏(新潟県知事)が、北東アジア輸送回廊におけるプロジェクトの優先付けについて質問したのに対し、栢原委員長は「現時点では、順 位付けはなくすべて同等との扱いである。これに順位付けを行うことは、各国の関心が異なるため難しい課題である」との認識を示した上で、中国の東北三省及 びモンゴルから日本海に抜けるルートが重要ではないかとの意見を述べた。
5.吉田事務局長が、事前配布資料に基づき、「北東アジア経済会議2002イン新潟」の企画書案を説明した。これに対して、以下6から14のコメント・質問があった。
6.平山氏は、次回経済会議に向けて輸送回廊に関する研究が進んでいることを指摘して、各国の資源及び労働力、資本、技術を結びつけることによ る北東アジア経済圏発展のための施策が具体化しつつあるとの評価を行った。この他、趙氏らが北東アジア経済フォーラムで検討している北東アジア開発銀行構 想を含む開発金融スキームなど、既存の議論の蓄積があるテーマについては、さまざまな方の意見を今後の経済会議に生かしながら新潟県としても最大限の努力 したいとの考えを述べた。なお、次々回の会議については、2003年の春に開催したいとの意向を表明した。
7.米川佳伸氏(国連経済社会局社会政策開発管理部計画調整官)が次の内容の発言を行った。頼尚龍氏が8月末で退官したが国連は今後も協力す る。社会開発の問題を地域協力専門家会合で取り上げることを歓迎する。会議運営の技術面では、パネルディスカッションにおいてフロアからの発言の時間を増 やすこと及び複数の行事(例えば、地域協力専門家会合とITパネル)が並行実施されるケースを可能な限り解消してもらいたい。
8.パーベル・ミナキル氏(ロシア科学アカデミー極東支部経済研究所所長)が次の内容の発言を行った。フロア参加者との意見交換ができるよう、 時間配分を調整したり、壇上の発言者とフロア参加者との距離を近づけたりする等の工夫が必要である。貿易・投資セッションで、中国及びロシアのWTO加盟 等に関連した議論を行なうのか。
9.ツォグツァイハン・ゴンボ氏(UNDP図們江開発事務局チームリーダー)が次の2点を評価した。一つは、同時に複数のテーマを議論する分科 会形式により時間が節約できること。もう一つは、事務局による文書作成、プレゼンテーションの準備など、会議運営業務の充実。一方、日本の実業界及び政府 代表者からより多くのの参加が実現するよう働きかけを強めることを事務局に要請した。
10.羅氏は、経済会議への北朝鮮からの参加が重要との観点から、この面での事務局の取組について質問した。これに対し、吉田事務局長は、金森委員長が昨年訪朝した際に貿易省に参加要請を行い、今年も既に招聘状を送付してあるという経過を説明した。
11.イシャーエフ氏は、経済会議参加者が学術界中心から経済界へと移ってきていることを評価した上で、日本の各県知事などの地域リーダーがよ り多く参加することが重要であると指摘した。また、北朝鮮からの参加が実現するよう、ロシア側としても努力したいとの意向を表明した。
12.廖貴年氏(中国国務院発展研究センターアジア・アフリカ発展研究所所長)は次の内容の発言を行った。北東アジア開発銀行の設置問題につい ては非常に興味をもっている。これが設立されれば北東アジアの発展に大きく寄与すると思う。北東アジア経済発展に関するマクロ部分にも注意を払ったほうが よい。6カ国間の諸問題を積極的に討議したい。政府のレベルでも討議が行われるよう刺激したい。
13.平山氏は、次の内容の発言を行った。日本政府及び各県知事の参加は重要である。例年の外務省及び経済産業省に加えて、次回の会議には財務 省からの参加を求めることにした。これまで他県知事が経済会議に参加したことはなく、実現に向けて検討したい。組織委員会が、APECが生まれるもとと なったPECCのようなものになることを期待する。
14.古賀憲介氏(日中東北開発協会会長)は、次の内容の発言を行った。同協会は、図們江開発計画に関心を持っており、特に輸送問題が重要であると認識している。同協会には、日本の経済界の主要企業が参加しているため、これら企業が経済会議に参加するよう促したい。
15.吉田事務局長は、以上の7から14のコメント・質問を1)組織運営全般にかかわる問題、2)提言的内容及び3)技術的問題の3項目に分類して、以下16から18の内容を発言した。
16.組織運営全般にかかわる問題としては、1)地方政府首長の参加実現、2)日本政府関係者の総括セッション以外への参加実現、3)実業界の 参加を増やして、貿易・投資パネルを実践的なものにすること及び4)北朝鮮からの参加実現の4点が重要である。なお、4点目の北朝鮮からの参加実現につい ては、北東アジア経済会議組織委員会の名前で要請することを、当日の参加者の合意事項とした。
17.提言的な内容としては、1)経済と貿易の分野での研究テーマを二国間問題から多国間問題へ広げて多国間自由貿易圏などについても研究すべ き、2)組織委員会の活動を強化し、また、各国で開催することによって、PECCのような組織にしたいとの2つのコメントが重要である。いずれも、具体化 を検討したい。
18.技術面では、1)基調報告と各セッションの内容の関連性を高めるべき、2)フロア参加者の自由発言の時間を長くすべき及び3)同時並行の分科会の開催時間を調整すべきとの3点の指摘について、可能な限り実現できるよう事務局で対応したい。
第2セッション
19.古賀氏は、2001年5月に日中東北開発協会と中国東北三省(吉林省、遼寧省、黒龍江省)が長春で「2001年日中経済協力会議-於吉林」を 開催し、1)図們江地域開発に関連して農産物を含む流通改革や都市間交流、2)情報技術(IT)と先進技術の応用と発展の2つのテーマについて、実りある 議論が行なわれたことを紹介した。また、2002年5月に開催予定の「2002年日中経済協力会議-於黒龍江」への参加を呼びかけた。
20.山澤氏は、2001年10月の上海APECでは、1)ITとニューエコノミーへのキャパシティビルディングと2)カタールWTO閣僚会議 での新ラウンド発足への路を開くことの2点が目玉であると指摘した。また、東アジアにおける地域主義傾向に触れて、1)東アジアは地域主義化の世界的流行 に遅れて参加した、2)FTAはWTO体制下でも自由化を達成する現実的な方途とみなされているとの見方を示し、日韓あるいは日中韓FTAが北東アジア経 済圏形成の強力な推進役になるとの期待を示した。
21.趙氏は、2001年6月に大阪市で北東アジア開発銀行の設立会議に関する円卓会議を開催し、その場での議論を踏まえ了解事項を文書化した ことを紹介した。また、2001年4月に長春で北東アジア経済フォーラムを開催したこと、次回を2001年10月にアンカレッジで開催する予定であること を報告した。
22.ゴンボ氏は、2001年4月に香港で、図們江地域開発諮問委員会及び北東アジア地域協力に関する経済フォーラムが開催されたことを紹介し た。会議では、プログラム対象拡大の可能性及び組織体制強化などについて議論された。会議での合意を受けて、現在、図們江開発プログラムの第3期計画(計 画期間3年)を実施しているところである。
23.米川氏は、2001年6月にハルピンで、北東アジアの社会開発のためのネットワーク化とキャパシティビルディングと題する国際ワーク ショップを、国連、黒龍江省人民政府及び光彩事業促進会が共同開催したことを紹介した。会議における各国の政策担当者や専門家によるブレインストーミング の成果は、今後さらなる作業を経て、最終成果物にまとめられる予定。
24.以後、自由な意見交換を行った。まず金森氏が、自由貿易協定は内向きのものと見られる恐れがあり、APECのオープンリージョナリズムと矛盾するのではないかと問題提起した。これに関連して、以下25から29の意見が述べられた。
25.山澤氏は、「自由貿易協定によって域内は活性化するが、域外は阻害する」というのは伝統的で少し古い見方であり、自由貿易協定により当該国の経済が活性化すれば他国も潤うはずであるとの意見を述べた。
26.廖氏は、欧州及び米州にあるような自由貿易圏をアジアでも形成する方向に進むべきであり、そのために関係国政府の関心を高める必要があるとの意見を述べた。
27.趙氏は、過去に開催した会議の内容を踏まえ、日韓の専門家は準備ができたところから自由貿易協定を結ぶべきであると考えているのに対して中国の専門家は時間がかかったとしても日中韓の三カ国が同時に締結すべきとの意見を持っている、という状況判断を示した。
28.これに関して、山澤氏は、中国はWTOに加盟するが自由貿易協定への準備は整っていないとの見方を示した。また、自由貿易協定の準備はWTOの新ラウンドへの準備と並行して進めるべきとの意見を述べた。
29.吉田氏は、国家間の自由貿易協定とは別個の議論として、自由貿易区の果たしうる役割を強調した。綏芬河や琿春などでの、中ロの企業と日本の中小企業との協力案件が増えることに期待を示した。
30.楊春氏(黒龍江省人民政府経済貿易委員会総合処処長)は、地方政府も貿易の自由化には大きな関心を持っており、沿海地方やチタ州との間で協議を行っていることを紹介した。そして、地域間のコンタクトは国家間の関係を強化する上でも重要であるとの意見を述べた。
31.平山氏は、北東アジア開発銀行設立構想に関し、1)日米政府の態度及び2)同銀行が発行することになる債券がどれだけ信用力を持ちうるか の2点が鍵となるのではないかとの意見を述べた。趙氏は、ADBのケースに基づき、1)米政府は途中まで反対していても最後には民間に要請される形で設立 に参画すると考えられること、2)設立国が事実上の政府保証を行なうことになることから債券は十分な信用力を得て流通することになろうとの回答を行った。
32.平山氏がロシア中央政府の北東アジアについての認識について質問したのに対し、イシャ‐エフ氏は中央よりも地方の方が進んでいるとの現状 認識を述べた。さらに、プーチン大統領がアジア太平洋地域を重視し始めていることもあり、今後は正しい政策が取られていくのではないかとの期待を示した。
第3セッション
33.イシャーエフ氏が「国家とロシア極東経済発展の見通し」と題して報告を行った。報告は、ロシア極東におけるこれまでの経済改革の成果、 1998年以降の経済成長の状況、極東地域の長期発展コンセプト及び最重要の諸プロジェクトについて論じるものであった。特に、産業構造改革の重要性、エ ネルギー分野での国際協力の重要性などを強調した。
34.ミナキル氏の名で準備された「ロシア極東の文脈における地域協力」と題する論文に関してスィルキン氏(ハバロフスク地方行政府副知事)が 報告を行った。報告の中でスィルキン氏は、ロシア極東の主要貿易相手国が中国、日本、韓国などのアジア太平洋諸国であること、またロシア全体とこれらの 国々との貿易に占める極東地域の比重が大きいことを指摘した。
35.これらの報告に対する吉田氏のコメントは、「2010年までのロシア発展戦略コンセプト」がロシア極東で準備されたこと、極東の発展のた めには国家資本主義的な戦略が必要だと考えること、エネルギー開発が重要な意義を持つこと、日本政府がロシア極東のプロジェクト(エネルギー関連が中心) に協力を行っていること及び観光が新しいトピックになっていることなどを指摘した。また、北東アジア経済会議2001イン新潟で提案された「日ロ投資促進 機構」の創設について、6月に今井敬経団連会長が訪ロした時にプーチン大統領に提案したことを紹介した。
36.山澤氏は、人口密度が低く、資源が豊富である点で、ロシア極東はオーストラリアと類似性を持つと指摘した。また、ロシアのヨーロッパ部と 極東部は経済構造・貿易構造がまったく異なるので、最適為替レートが違うはずであり、「極東独自のルーブル」という発想もあってよいのではないかと述べ た。
37.金森氏が自由経済区プロジェクトが円滑に進んでいない理由について質問したのに対し、ミナキル氏はロシア連邦政府があまりにも単純に「平等な市場」を信奉しすぎたためであるとの見方を示した。
38.平山氏は、ロシアシベリア・極東の天然ガスは北東アジアにとっての「宝」であるとの認識を示し、市場原理だけに任せることなく、地域内の関係者が相互理解を深めた上で活用すべきだとの意見を述べた。
(事務局作成)