国際経済学部について
学部長あいさつ
学部長 細谷 祐二 教授
国際経済学部に関心をお持ちの皆様へ
新入生が最初に学ぶ経済学入門という授業を毎年担当しています。その初回で、今日は1776という数字を覚えるようにお願いします。それは経済学の祖といわれるイギリスのアダム・スミスが最初の経済学の体系書「諸国民の富」を発刊した年であり、同国で始まった産業革命が本格化する時期に当たります。アダム・スミスを起点とすると、経済学はたかだか250年の歴史を有する若い学問であることが分かります。一方、この250年間は、ホモサピエンスの30万年とか20万年と言われる歴史から見ればほんの一瞬に過ぎません。しかし、工業化を通じ経済が著しく発展し、多くの先進国では一人当たり国民所得の持続的上昇というこれまで人類が経験したことのない現象が起こり、250年経った今でも継続しています。その結果、人間の生活の中に占める経済問題のウェイトが格段に高まり、日々のニュースでも経済が論じられない日はありません。
この驚異的な人類史のエポックを現出させたのは、次から次に絶えることなく生み出される技術革新、イノベーションに他なりません。電気、自動車、コンピュータのない世界は今や考えられません。スマートフォンもこの20年ほどで普及した製品ですが、多くの現代人は片時も手放すことはできません。またChatGPTに代表される生成系AI(人工知能)は、これまでに人間の手や指の延長として発明された道具や機械と異なり、ついに人間の脳を延長しあるいは代替しようとしています。
こうしたイノベーションに基づく我々の生活や環境の激変は、20世紀の最後の四半世紀以降加速しています。これを我々はIT革命、交通革命、エネルギー革命と呼び、その結果、グローバル化が量的にも質的にも格段に進んでいます。ヒト、モノ、カネが国境を越えて毎日目まぐるしく移動し、経済の相互依存関係は抜き差しならないものとなっています。実際の戦争や冷戦で政治的に対立している国であっても、お互いに経済的結びつきが昔に戻れないほど強まっており、政治と経済は別物として扱えなくなっています。世界のどこかで起こった異変が、すぐに物価の上昇や部品の入手難による生産中止といった事態を招き、我々は影響を免れません。またGAFAに代表される巨大多国籍企業は国単位の法律や制度を超え、ベンチャー企業の買収や利用者のデータの蓄積・占有を進めており、他に隔絶した有利な経済上の地位を確保しつつあります。
一方、日本は世界に先駆けて高齢化、人口減少に突き進んでいます。新潟県をはじめとする地方圏からは引き続き若い年齢層を中心に人口流出が続いています。この二つの人口減少問題を大きな背景として、一部の大都市地域を除き、地方経済の疲弊が進んでいます。このまま放置すれば、ベーシック・ヒューマン・ニーズを充足するための人材やインフラストラクチャーの維持が困難になる恐れが現実化しています。これは人類史上、未知の領域に属する経済現象であると言うこともできます。したがって、解決すべき多くの課題があり、極めてチャレンジングな問題です。
もう一つ大きな変化は、自分たち人間が発信するその活動を示すデータが巨大な流れとなって私たちを通り過ぎていき、画像情報を含め膨大なデータが日々蓄積されています。生成系AIは、機械学習などの有用なアルゴリズムの記述、解析、実装等を可能とするデータサイエンスの著しい発達により生み出されています。それを応用することで膨大なデータの超高速処理が可能となり、さらなる高速化を目指して半導体やスーパーコンピュータ等のハードウエア、さまざまな解析を可能とするソフトウェア、さらには人間の体の限界を超えた仮想現実世界という新たな空間を生み出しているのです。
経済の占めるウェイトの持続的上昇、逆行を許さないグローバル化の進展、その一方で進行する地域経済の疲弊、データの分析利用の革新的高度化といった大きな四つの変化は、私共国際経済学部の意義、重要性を指し示すものであると考えます。すなわち、新潟県に立地し地域の経済のプレーヤーをステークホールダーとする国際経済学部は、国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、現実を正しく深く把握するデータ・情報分析力、確かな語学力・国際コミュニケーション力を身に付けた人材を育成することを目的としています。同時に、日々目まぐるしく変化する状況に左右されず応用の効く基本的な視点やものの考え方を体系的かつ段階的に学修するカリキュラム構成を取っています。世界で活躍し地域にも貢献する有為な人材を育成することが国際経済学部のミッションです。
若く自分の将来についての希望を有しそのために必要な能力を身に付けたいという人の入学を教員一同心から歓迎します。また、卒業後は優れた人材として地域の企業や自治体に受け入れていただけるよう最善の努力を傾注してまいります。
経歴
1957年東京都生まれ。
1981年東京大学経済学部経済学科卒業。
1981年通商産業省入省、92年信州大学経済学部助教授に出向、95通商産業省通商政策局通商調査室長、2002経済産業省近畿経済産業局総務企画部長、08経済産業省地域経済産業グループ地域政策研究官を経て、18年経済産業省退職。
2018年新潟県立大学採用、20年国際経済学部国際経済学科長。
主要著書
『グローバル・ニッチトップ企業論-日本の明日を拓くものづくり中小企業』, 白桃書房, (2014年)
『地域の力を引き出す企業-グローバル・ニッチトップ企業が示す未来』, ちくま新書, 筑摩書房, (2017年)
国際経済学部の3つのポリシー
国際経済学部のディプロマ・ポリシー
本学部では、国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、情報分析力、確かな語学力・国際コミュニケーション力を有する人材を育成することを目的とします。そのために本学部では、「国際経済コース」「地域経済創生コース」の二つのコースを設け、「国際経済コース」では「国際的視野から東アジアをはじめとする国際経済における経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、グローバル化する経済・産業・企業において主体的に活躍し、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力」を有する人材、「地域経済創生コース」では「国際的視野を備えながら地域における経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、地域の経済・産業・企業の創生と発展に主体的に関わり、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力」を有する人材の養成を行います。
本学部では、以下に示す四つの「知・力」を身に付け、かつ所定の単位を修得した者に、学士(経済学)を授与します。
知識・理解
(1)東アジアをはじめとする国際社会とのネットワークを深めつつ新潟の持続的発展を担うことができるように、国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解するための基礎となる知識を獲得し、理解する。
(2)グローバル化する経済・産業・企業において主体的に活躍し、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力又は国際的視野を備えながら地域の経済・産業・企業の創生と発展に主体的に関わり、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力を獲得する。
基本的技能・態度
(1)国際経済や地域経済に関連して、統計データを用いた分析やデータの処理・分析に必要な基礎力を身に付ける。
(2)国際経済や地域経済に関連して、統計データを用いた分析やさまざまな業務におけるデータの処理・分析に必要な実践的な情報分析力を身に付ける。
コミュニケーション能力
(1)国際経済や地域経済に関連する知識や情報を収集・整理・分析した結果をまとめ、それについて論理的に分かりやすく表現する能力や意見交換する能力を身に付ける。
(2)外国語での会話や資料の読解、文章表現を行う基礎的能力を身に付け、自己を表現し他者と相互に理解する国際コミュニケーション力を身に付ける。
総合的活用力
国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解する専門的能力、情報分析力、国際コミュニケーション力を総合的・実践的に活用し、主体的に問題点を抽出し答えを探求することができる力を身に付ける。
国際経済学部のカリキュラム・ポリシー
本学の基本理念である「国際性の涵養」「地域性の重視」「人間性の涵養」 の下で国際経済学部が育成する人材が身に付ける能力は、「国際的視野を備えて、東アジアをはじめとする国際経済・地域における経済・産業・企業の仕組みを理解する力」、「統計データを用いた分析やデータの処理に必要な基礎力を高める実践的な情報分析力」、「英語を実践的に駆使する力と露中韓言語を理解する力」を三つの主要な柱とします。これに対応して、国際経済学部のカリキュラムは、「国際性の涵養」「地域性の重視」「人間性の涵養」という本学の理念に基づいて設定された全学共通の基盤科目及び本学部の学生を対象とする専門科目により構成します。
なお、段階的及び体系的な教育課程を構築するため、すべての開講科目について、ナンバーを施し、100番台から400番台までの4段階の科目を学生の進度に応じて配置します。100番台は入門科目、200番台は専門基礎科目、300番台は専門応用科目という位置付けとします。「専門演習Ⅲ」「専門演習Ⅳ(卒業論文を含む)」は400番台の科目として配置します。
(1)「国際性の涵養」「地域性の重視」「人間性の涵養」という本学の理念に基づく教養教育
幅広い視野と深い教養を修得するとともに本学が位置する新潟への関心と問題意識を促すことを目的として、「新潟学」「歴史と文化」「人間社会と科学」「社会と経済の仕組み」のカテゴリーからなる現代教養科目を配置します。
(2)「国際的視野を備えて、東アジアをはじめとする国際経済・地域における経済・産業・企業の仕組みを理解する力」及び「統計データを用いた分析やデータの処理に必要な基礎力を高める実践的な情報分析力」を養うための教育
体系的かつ段階的に学力を養うため、「専門的基礎能力を高める入門科目(1年次)」、「専門的知識に裏付けられた理解力・応用能力を高める専門科目(2~3年次)」、そして、「実践力を習得する専門科目(3~4年次)」を配置します。
- 「国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解する基礎的専門能力」及び「基礎的情報分析力」を習得するために「専門的基礎能力を高める入門教育(1年次)」(入門科目 100番台)を配置します。入門科目は、1)全学共通科目である経済学及び情報・データ分析関連分野の入門科目、2)本学部の学生のみを対象とする同分野の入門科目、3)入門演習により構成されます。入門演習は、アカデミック・リテラシーの基礎を身に付けるとともに、経済的現象に広く探究心を持ち大学の教育への興味、関心を高めることを目的とします。
- 2年次以降の学生に対して「国際経済コース」と「地域経済創生コース」の二つのコースを設け、専門基礎科目(200番台)を配置します。学生は2年次当初からいずれかのコースに所属します。「国際経済コース」においては「専門的知識に裏付けられた理解力・応用能力を高める教育」の目的は「東アジアをはじめとする国際経済における経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、グローバル化する経済・産業・企業において主体的に活躍し、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力」の習得、「地域経済創生コース」においては「国際的視野を備えつつ、地域における経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、地域の経済・産業・企業の創生と発展に主体的に関わり、役割を担ってゆく上で必要とされる専門知識と応用能力」の習得のために、専門科目を両コース共通科目、国際経済コース科目、地域経済創生コース科目として配置します。
- 具体的課題を解明し、主体的に解決に取り組むことのできる実践的専門能力を習得するために、3~4年次向け学生に専門応用科目(300及び400番台)を配置します。「国際経済コース」では東アジアをはじめとする国際経済が直面する具体的課題を取り上げ、「地域経済創生コース」では地域の経済・産業・企業が現実に直面する具体的課題を取り上げた教育を行います。
- 3~4年次では、講義科目に加えて専門演習科目を設け、少人数による実践的教育(卒業論文作成指導を含む)を行います。
- 4年次における専門演習及び卒業論文は、ディプロマ・ポリシーで掲げた<総合的活用力>「国際的視野を備えた専門的能力、情報分析力、国際コミュニケーション力を総合的・実践的に活用し、主体的に問題点を抽出し答えを探求する力」を養う上で重要な科目とします。
(3)確かな語学力・国際コミュニケーション力を養うための教育
外国語教育においては、「英語を実践的に駆使する力」を育成し、英語でコミュニケーションを行うことのできる基盤的能力、英語を実践的に駆使する能力の習得を目指すとともに、「露中韓言語を理解する力」として露中韓言語の基礎力と理解力の習得を目指します。
- 英語教育は、4年間を通して、英語科目、経済学の専門科目、海外の大学と連携した海外研修、交換留学等のプログラムにより行います。
- 英語科目は、高大接続改革の一環としての入試改革において重視すべきとされた「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を総合的に伸ばすことを主眼とする一般英語プログラムを1年次に履修することに加え、1年次後期から2年次にかけて(100番台及び200番台科目において)CLILの手法を用い、英語の読む・聞く・話す・書く基礎的能力を高めるとともに、英語を実践的に駆使する力を養うために、英語教育を専門とする教授陣によるプログラムに基づき集中的英語教育を行います。
- 2年次において「CLIL English」(200番台)及び本学部学生のみ開講される“English for Economics”等の英語科目(いずれも200番台)を配置し、専門能力と実践的な語学力・コミュニケーション力の両面を高める観点から配置される英語による専門科目(主に3年次向け300番台)の履修に向けての橋渡しの役割を果たす科目とします。
- 2、3年次においては、英語により開講される専門科目を履修することにより、専門知識を踏まえた実践的な英語力、コミュニケーション能力を高めます。
- 露中韓言語については、2年次(200番台)において露中韓言語のうち一言語を選択必修とし、各言語の基礎力を養うインテンシブな授業を行います
- 露中韓各言語のさらに高度なリテラシー修得のため、3年次の選択科目(300番台)として、露中韓各言語を使ったインターネット等での情報収集、経済関係のメディア情報及び専門文献の講読等に必要とされるより高度なリテラシー修得を目指す科目を配置します。さらに、会話力向上のための科目を選択科目(300番台)として配置します。
国際経済学部のアドミッション・ポリシー
(1)教育内容・特色
国際経済学部は、「国際的視野から経済・産業・企業の仕組みを理解する専門知識を有し、情報分析力、確かな語学力・国際コミュニケーション力を有する人材を育成する」ことを目的とし、専門性の高い能力を有する人材の教育を目指しています。また、質の高い教育を支え、地域や社会のニーズを踏まえた研究活動を推進していきます。
(2)国際経済学部が求める人材像
国際経済学部では、次のような学生を求めています。
入学を期待する人材
- 国際経済及び地域経済に関心を有し、専門的能力を高めることに意欲を有する者
- 経済を読み解くための情報・データに関心を有し、その分析能力を高めることに意欲を有する者
- 国際経済や地域経済に関して学んだ知識や思考力を生かして社会や地域に貢献する意欲を有する者
(3)大学入学までに身に付けておくことが望ましい知識・能力・態度
高等学校における学力の三要素、「知識・技能」「思考力、判断力、表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」に関して以下の学力評価を行います。
基礎的な知識・技能
経済学を学ぶために必要な基礎学力として、高等学校等で身に付ける英語、国語、数学の知識。特に英語に関しては、「読む・書く・話す・聞く」の4技能をバランスよく習得し、幅広い基礎学力を身に付けていること。
思考力、判断力、表現力
広く経済社会のさまざまな動きや変化に対する探究心を有し、自らの考えを論理的に表現し、わかりやすく伝えることができること。
主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度
国際及び地域の経済問題に常に関心を持ち、それらの解決に向けて専門知識・思考方法を自ら活用し、国際社会及び地域社会に積極的に貢献しようという意識を有していること。