各分野からのメッセージ
健康栄養分野
人間生活学部健康栄養学科 教授 田村朝子
管理栄養士は、乳幼児から高齢者、健康な方、傷病者など様々な人の健康を栄養・食生活の面からサポートする専門人材で、近年は管理栄養士のニーズが非常に高くなっています。
超高齢社会となった現在、高齢者が医療・介護を必要とせず、自立して豊かな日常生活を営めるよう健康寿命を延伸させることが望まれています。そのためには栄養バランスのとれた食事を口から食べることがカギとなります。2021年度介護報酬の改定では、高齢者施設における管理栄養士の配置の増加と管理栄養士による栄養ケア・マネジメントが強化されることになりました。これは、管理栄養士が高齢者の食べる機能の支援を担う人材であり、これを重視した改定となりました。
飽食の時代といわれ食べ物へのアクセスが良くなった結果、糖尿病などの生活習慣病に罹患する方が増加している一方で、偏食やダイエットによる低栄養、アレルギーなど、食に関する課題は複雑化しています。
このような現代社会の複雑化した食の課題に対応するためには、お一人おひとりの課題を的確に把握し、他職種と連携して適切な栄養教育や給食提供による栄養管理を立案、実施できる管理栄養士の養成が求められています。対象者の的確な課題把握のためには、最新の専門的知識・スキルに基づく栄養アセスメント力、他職種との連携のためにはコミュニケーション力だけでなく、科学的根拠に基づく栄養ケア計画の立案力が必要となります。本学の大学院では、学部で学んだ知識・スキルに上記のような高度な力をつけた管理栄養士のリーダーとなれる人材の養成を目指しています。
専門分野
給食経営管理
学位等
修士(家政学)、博士(学術)、管理栄養士
食品開発分野
人間生活学部健康栄養学科 教授 曽根英行
食を通した健康づくりは、栄養バランスの良い食事の提供を基本としながら、健康食品による不足栄養素の補完や生活習慣病の一次予防・重症化予防といったアプローチが重要となります。
健康食品のうち、国の制度により食品の機能性を表示することのできる保健機能食品(特定保健用食品や機能性表示食品など)は、消費者が必要な機能、例えば「体脂肪を減らす」や「ストレスや疲労感を軽減する」などを適切に選択できることから、健康づくりの場で広く活用されています。特に、機能性表示食品については、手続き等が簡易化されたことから、多くの中小企業からの参入と食品産業の発展を通じた国民の健康増進に期待が寄せられています。
一方で、機能性表示食品を開発する企業側には、「安全性の確保」・「機能性表示に関する科学的根拠」・「適正な表示による消費者への情報提供」が強く求められています。そのため、健康・栄養の課題が複雑化している現代では、人を対象とした幅広い栄養学と健康管理学を背景として、食を通した栄養管理や健康の保持・増進のメカニズムの理解とこれらを食品開発へ応用することの出来る専門的知識・基礎的研究能力を有する人材が必要とされています。
こうした社会的要請に応えるため、本学の大学院では、複雑な課題と多様な要因の複合的な影響を考慮しながら健康・栄養面で有用な食品開発とその有効性の科学的検証を行う専門力と、適切な情報発信により関係者と連携して開発研究全体をリードしていく実践力・発信力を備えた食品開発研究員を養成します。
専門分野
栄養生化学、食品機能学
学位等
修士(農学)、博士(農学)
食と健康の制度・政策分野
人間生活学部健康栄養学科 教授 村山伸子
現代は、同一個人でも肥満でかつ栄養素が不足している、疾患を複合的にもっている等、健康・栄養の課題が複雑であるとともに、課題の背景となる要因が多様であり、個人、家庭、組織、地域、社会環境等の要因が複合的に影響しています。また、健康格差、栄養格差の課題も顕在化しています。
したがって、個々人の健康・栄養改善のために、病院、介護保険施設、福祉施設、学校、事業所等の組織単位での栄養管理が必要であるだけでなく、各組織とも連携しつつ、地域や社会環境の要因を改善するための行政の制度や政策が必要です。
制度・政策の立案にあたっては、EBPM(Evidence Based Policy Making)「証拠に基づく政策立案」の考え方に基づき、集団単位の実態把握と分析をし、科学的根拠をもとに地域の健康・栄養課題の特定と優先順位付け、対策の計画、実施、評価、改善をする能力が必要です。さらに、より効果を上げるためには、海外や国際機関の政策やその効果についての知見をもち、国際水準の政策が立案できることが必要です。逆に、日本の優れた栄養制度・政策の海外展開も求められています。
一方、他職種等との連携のためには、自ら構築した栄養制度・政策について、科学的根拠をもち、論理的・構造的に説明する力が必要です。
このような社会の要請に応えるため、大学院教育を通して、地域行政機関、開発途上国や国際機関で、最新の専門的知識・スキルに基づいて、地域や集団の健康課題や栄養課題の実態把握と分析から効果的な対策や制度を立案し、関係者と協働で実施し、評価、改善できる専門職行政職員を養成します。
専門分野
公衆栄養学、国際栄養学
学位等
栄養学修士、博士(保健学)