1999年6月、女性差別撤廃条約に基づき男女平等を実現するために、わが国でも漸く「男女共同参画社会基本法」が制定された。しかし、日常生活のなかでも男女の性別で役割を固定する考え方など女性の社会進出を阻む状況は根強く生きている。このような社会背景のなかで、最近の青年男女の意識は必ずしも男女共同参画に積極的とはいえないのでないかという側面もみられることから、男女意識についての青年の保守化傾向の検証をするために、県立新潟女子短期大学在学生、及び3世代の同窓生にアンケート調査を実施して、世代問格差を検討した。また、新潟という地域性の中で女子短期大学生と共学の四年制大学である新潟大学生との間でのジェンダー観の差があるのかどうかについても検討を加えた。
本調査ば2000年11〜12月に実施し、県立新潟女子短期大学在学生622名、卒業生は昭和40〜42年卒の55歳前後88名(回収率40)、昭和54〜55年卒の40歳代前半147名(回収率41%)、平成5〜6年卒の26〜28歳94名(回収率25%)、及び新潟大学在学生338名(男性172名、女性166名)、合計1289名の回答を集計して解析した。調査票(参照)は質問紙法による記入式アンケートで、本学及び新潟大学の在学生に対しては直接配布・回収し、本学卒業生に対しては、郵送方式で行った。
調査表の質問項目の中で、「I.県立新潟女子短期大学に関連して」、「II.女子短期大学一般について」、「III.県立四年制大学について」、および「IV.女性の就労について」の4項目は、県立新潟女子短期大学在学生の青年実行委員達が、男女共学化、四年制化への転換のうえに県立の大学として独自の公教育を推進して行かなければならない本学の現状をふまえて設けた項目である。次の「V.あなたの子ども時代について」は、ジェンダー観を形成する要因として、個人的要因と生育環境要因、ならびに社会的要因が大きく関与しているのでないかということを検証するための質問であり、最後の「VI.あなたの男女意識について」は、調査対象者のジェンダー観を把握するための尺度として実施した。
なお、「I.県立新潟女子短期大学に関連して」の質問項目に関しては、当然のことながら県立新潟女子短期大学在学生、および卒業生のみに回答してもらった。
男・女 未婚・既婚 *いずれかに○印をつけてください。
新潟青年男女の共同参画を考える会
(文部省委嘱事業 県立新潟女子短期大学)
あてはまる番号を一つ選び、○印をつけて下さい。
――ご協力ありがとうございました――
21世紀のこれからの社会に「女子短期大学は必要であるか」という質問5は、調査対象者の男女意識を測る物差しの一つになろう。新潟女子短大卒業生の約5割が「必要である」「少しは必要」と回答しており、特に平成5〜6年卒業生では特異的に高かった(63%)が、新潟女子短大在学生ではその数に少し減少がみられた。逆に、新潟大学在学生てば「ほとんど不要」「不要である」とする回答が約3割を占めたのに対して、新潟女子短大の食物栄養専攻のみが6%と非常に少なかった。女子短期大学に求めるものは、新潟女子短大在学生では、第一に「資格」であり、「教養」を大きく上回っているのに対して、卒業生ではわずかではあるが「教養」が「資格」より優先し、新潟大学在学生では第一に「教養」が挙げられている。
質問7での「共学」か「女子大」かと尋ねた結果は、新潟女子短期大学在学生の83%、卒業生では67%が共学志向であったが、一方、卒業生の中には明確な女子大志向者も13%を占め、特に平成5〜6年卒業生では20%と特に多かった。
「結婚後も場合によっては別居して仕事を続けるかどうか」、夫の転勤について行くのも、家族の介護を女性が負うのも当然という社会的風潮のなかで、女性が出産や育児をしながら働き続けるには相当の覚悟と努力が必要であり、このテーマは実に重い。結婚退職、出産退職を迫る企業もある現実のなかでどのように考えているのかを尋ねた。
【学校・学科別】 | 続けたい | やめる | どちらともいえない | 無回答 |
---|---|---|---|---|
全体 | 73.6 | 10.6 | 12.4 | 3.4 |
*新潟女子短大在学生計 | 77.7 | 7.5 | 12.3 | 2.5 |
生活科学科生活科学専攻 | 78.4 | 13.7 | 5.9 | 2.0 |
食物栄養専攻 | 76.8 | 11.6 | 11.6 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 79.8 | 3.6 | 11.9 | 4.8 |
幼児教育学科 | 80.0 | 8.0 | 10.7 | 1.3 |
英文学科 | 77.1 | 6.9 | 13.7 | 2.3 |
国際教養学科 | 76.4 | 6.4 | 14.0 | 3.2 |
*新潟女子短大卒業生計 | 62.7 | 18.0 | 13.4 | 5.9 |
昭和40〜42 | 57.0 | 29.1 | 12.7 | 1.3 |
昭和54〜55 | 64.5 | 13.0 | 13.0 | 9.4 |
平成5〜6 | 65.2 | 15.7 | 14.6 | 4.5 |
*新潟大学在学生計 | 78.9 | 7.9 | 11.2 | 2.0 |
質問9は、結婚後の仕事継続の意向を尋ねた結果である。「続けたい」という回答は、新潟女子短大在学生、新潟大学在学生(女性)共に約8割を占めているが、昭和40〜42年卒業生では、「やめる」という回答が約3割みられた。新潟女子短大在学生、および新潟大学在学生では、「やめる」という回答は、それぞれ7.5%、7.9%に過ぎなかったが、仕事を続けたくない理由として、「育児に専念したい」が最も多く、それぞれ48%、58%を占めている。
質問10では、女性上司の下で男性が働くことに違和感を持つかどうかを尋ねた。新潟大学の男子学生も全員回答していた。全体では、「ほとんど感じない」「全く感じない」という回答が合わせて63%を占めた。その内訳は、新潟女子短大在学生では64%、新潟大学在学生では69%に対して、新潟女子短大卒業生では54%と低く明らかに世代間格差が窺いしれた。しかし、卒業生の中には、「質問自体が時代遅れである。私の下は、全員男性であるが、誰もそれを疑問に思わない。現場で責任を持っているが、外部関係者にも信頼されている。男女関係なく職業人としての本人の自覚がすべてである。」という記述もみられた。一方、「違和感を感じる」「少し感じる」という回答は、新潟大学在学生が15%に対して、新潟女子短大在学生は22%と多かった。
【学校・学科別】 | 昇級・昇進に関して | 結婚に関して | 出産 | 周囲からの信用 | 仕事の内容 | その他 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 31.9 | 37.1 | 64.3 | 18.1 | 32.4 | 4.9 | 10.0 |
*新潟女子短大在学生計 | 38.3 | 45.2 | 71.4 | 19.8 | 36.7 | 2.8 | 6.2 |
生活科学科生活科学専攻 | 39.2 | 35.3 | 60.8 | 23.5 | 49.0 | 3.9 | 2.0 |
食物栄養専攻 | 34.8 | 46.4 | 76.8 | 18.8 | 29.0 | 4.3 | 7.2 |
生活福祉専攻 | 32.1 | 39.3 | 75.0 | 16.7 | 38.1 | 3.6 | 8.3 |
幼児教育学科 | 25.3 | 50.7 | 72.0 | 14.7 | 29.3 | 2.7 | 8.0 |
英文学科 | 40.6 | 52.0 | 73.1 | 22.3 | 36.0 | 1.7 | 4.6 |
国際教養学科 | 46.5 | 40.8 | 68.2 | 20.4 | 39.5 | 2.5 | 7.0 |
*新潟女子短大卒業生計 | 21.6 | 22.2 | 50.7 | 15.7 | 25.5 | 9.8 | 16.0 |
昭和40〜42 | 27.8 | 10.1 | 43.0 | 21.5 | 29.1 | 11.4 | 15.2 |
昭和54〜55 | 21.0 | 24.6 | 57.2 | 9.4 | 21.7 | 13.0 | 18.1 |
平成5〜6 | 16.9 | 29.2 | 47.2 | 20.2 | 28.1 | 3.4 | 13.5 |
*新潟大学在学生計 | 27.0 | 34.9 | 63.2 | 15.8 | 28.9 | 3.3 | 13.2 |
質問11は、「女性」ということが、仕事をするうえで障害になるかどうかを尋ねた結果である。新潟女子短大在学生、卒業生、および新潟大学在学生のいずれも「出産に関すること」が第一番目に挙げられた。しかし、2番目は、新潟女子短大在学生、新潟大学在学生共に「結婚に関すること」を挙げているが、卒業生では「仕事の内容」の方が優先的に挙げられている。また、「出産」や「結婚」に関しても、年齢が高い卒業生の方が、20歳前後の学生よりも低いハードルとして捉えていることがわかる。
ここでは、回答者が子ども時代にどのような家族・家庭環境で生育したのか、親からの期待をどのように受け止めていたのかについて回答していただいた。主な結果について以下に記す。
【学校・学科別】 | 亭主関白型 | かかあ天下型 | 母親型 | 弱者・人形型 | 仲間・平等型 | その他 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 35.8 | 11.9 | 3.7 | 0.3 | 39.2 | 5.4 | 3.6 |
*新潟女子短大在学生計 | 33.9 | 12.9 | 4.2 | 0.0 | 42.8 | 4.2 | 2.1 |
生活科学科生活科学専攻 | 32.1 | 13.2 | 3.8 | 0.0 | 45.3 | 3.8 | 1.9 |
食物栄養専攻 | 31.4 | 10.0 | 7.1 | 0.0 | 50.0 | 1.4 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 35.3 | 12.9 | 2.4 | 0.0 | 44.7 | 3.5 | 1.2 |
幼児教育学科 | 26.3 | 15.8 | 3.9 | 0.0 | 50.0 | 3.9 | 0.0 |
英文学科 | 35.8 | 11.7 | 5.6 | 0.0 | 39.7 | 4.5 | 2.8 |
国際教養学科 | 36.5 | 13.8 | 2.5 | 0.0 | 37.7 | 5.7 | 3.8 |
*新潟女子短大卒業生計 | 45.9 | 11.9 | 2.4 | 0.6 | 24.6 | 7.3 | 7.3 |
昭和40〜42 | 53.4 | 9.1 | 1.1 | 1.1 | 22.7 | 8.0 | 4.5 |
昭和54〜55 | 44.2 | 14.3 | 2.0 | 0.0 | 21.8 | 6.8 | 10.9 |
平成5〜6 | 41.5 | 10.6 | 4.3 | 1.1 | 30.9 | 7.4 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 29.6 | 10.4 | 4.1 | 0.6 | 46.7 | 5.6 | 3.0 |
質問12は、両親の夫婦関係にみる勢力構造を5つの勢力型(*)によって尋ねた結果である。これをみると、全体で「亭主関白型」と「仲間・平等型」に大別されている。学校・学科別では、新潟女子短大卒業生で年齢が高くなるほど「亭主関白型」が増加し、「仲間・平等型」が減少していることがわかる。逆に、新潟大学財学生では、「亭主関白型」が少なく、「仲間・平等型」が多い。新潟女子短大在学生では、幼児教育学科で「亭主関白型」が少なく、幼児教育学科と食物栄養専攻で「仲間・平等型」が多い。
(*)注:川島武宣『結婚の理想と現実』中央公論社(1956)を参照した。
【学校・学科別】 | ほとんど母親 | 主に母親、ある程度父親 | 平等に分担 | 主に父親、ある程度母親 | ほとんど父親 | その他 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 65.1 | 25.9 | 2.9 | 0.2 | 0.2 | 2.8 | 2.9 |
*新潟女子短大在学生計 | 68.0 | 23.8 | 4.3 | 0.2 | 0.2 | 2.3 | 1.3 |
生活科学科生活科学専攻 | 62.3 | 24.5 | 3.8 | 1.9 | 0.0 | 5.7 | 1.9 |
食物栄養専攻 | 65.7 | 28.6 | 5.7 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 75.3 | 16.5 | 3.5 | 0.0 | 0.0 | 3.5 | 1.2 |
幼児教育学科 | 69.7 | 19.7 | 9.2 | 0.0 | 1.3 | 0.0 | 0.0 |
英文学科 | 64.8 | 27.4 | 3.9 | 0.0 | 0.0 | 2.2 | 1.7 |
国際教養学科 | 69.8 | 23.3 | 2.5 | 0.0 | 0.0 | 2.5 | 1.9 |
*新潟女子短大卒業生計 | 59.9 | 27.4 | 1.2 | 0.3 | 0.3 | 4.0 | 7.0 |
昭和40〜42 | 58.0 | 31.8 | 1.1 | 0.0 | 0.0 | 5.7 | 3.4 |
昭和54〜55 | 55.8 | 27.9 | 0.0 | 0.7 | 0.0 | 5.4 | 10.2 |
平成5〜6 | 68.1 | 22.3 | 3.2 | 0.0 | 1.1 | 0.0 | 5.3 |
*新潟大学在学生計 | 64.8 | 28.4 | 2.1 | 0.3 | 0.0 | 2.7 | 1.8 |
質問13は、両親の夫婦関係にみる役割構造のうち、家事労働の分担状況について尋ねた結果である。約3分の2が「ほとんど母親」と回答しているほか、「主に母親、ある程度父親」の約4分の1をあわせると、9割以上が家事労働は"母親中心”で行われていたといえる。学校・学科別では、新潟女子短大卒業生で年齢が高くなるほど「主に母親、ある程度父親」の割合が増加しており、在学生よりも父親が家事労働に関与していたことが示唆された。在学生の中では、幼児教育学科が「平等に分担」している割合が高い。
【学校・学科別】 | フルタイム勤務 | パートタイム勤務 | 自営業 | 働いていない | その他 | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|---|
全体 | 30.8 | 28.5 | 13.1 | 19.9 | 5.2 | 2.5 |
*新潟女子短大在学生計 | 34.4 | 32.2 | 10.5 | 17.8 | 4.2 | 1.0 |
生活科学科生活科学専攻 | 34.0 | 34.0 | 5.7 | 22.6 | 1.9 | 1.9 |
食物栄養専攻 | 30.0 | 27.1 | 14.3 | 22.9 | 5.7 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 40.0 | 32.9 | 5.9 | 17.6 | 2.4 | 1.2 |
幼児教育学科 | 30.3 | 35.5 | 7.9 | 18.4 | 7.9 | 0.0 |
英文学科 | 35.8 | 31.3 | 12.3 | 14.0 | 5.6 | 1.1 |
国際教養学科 | 34.0 | 32.7 | 11.9 | 18.2 | 1.9 | 1.3 |
*新潟女子短大卒業生計 | 20.4 | 17.3 | 19.1 | 26.7 | 9.7 | 6.7 |
昭和40〜42 | 6.8 | 5.7 | 26.1 | 48.9 | 9.1 | 3.4 |
昭和54〜55 | 22.4 | 11.6 | 22.4 | 19.7 | 13.6 | 10.2 |
平成5〜6 | 29.8 | 37.2 | 7.4 | 17.0 | 4.3 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 34.3 | 32.5 | 12.1 | 17.2 | 2.7 | 1.2 |
質問14は、両親の夫婦関係にみる役割構造のうち、母親の就労形態について尋ねた結果である。全体では、約3割が「フルタイム勤務」と回答しており、「パートタイム勤務」「自営業」とあわせると7割以上の母親が何らかの形で就労していた。学校・学科別では、新潟女子短大卒業生で年齢が高くなるほど「フルタイム勤務」「パートターム勤務」の割合が減少し、昭和40〜42年卒業生ではそれぞれ約7%・6%に過ぎない。逆に「働いていない」割合は年齢が高くなるほど上昇し、昭和40〜42年卒業生では半数に近い。また、卒業生の特徴として「自営業」の割合が高い点も挙げられる。
【学校・学科別】 | 父方の祖父母 | 母方の祖父母 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
あり | なし | 無回答 | あり | なし | 無回答 | |
全体 | 45.2 | 52.0 | 2.8 | 13.9 | 82.5 | 3.6 |
*新潟女子短大在学生計 | 46.6 | 51.8 | 1.6 | 14.8 | 83.0 | 2.3 |
生活科学科生活科学専攻 | 49.1 | 47.2 | 3.8 | 5.7 | 88.7 | 5.7 |
食物栄養専攻 | 58.6 | 41.4 | 0.0 | 11.4 | 87.1 | 1.4 |
生活福祉専攻 | 43.5 | 54.1 | 2.4 | 15.3 | 82.4 | 2.4 |
幼児教育学科 | 57.9 | 42.1 | 0.0 | 13.2 | 86.8 | 0.0 |
英文学科 | 43.0 | 55.9 | 1.1 | 18.4 | 79.9 | 1.7 |
国際教養学科 | 40.9 | 56.6 | 2.5 | 15.7 | 81.1 | 3.1 |
*新潟女子短大卒業生計 | 42.2 | 51.1 | 6.7 | 9.7 | 81.8 | 8.5 |
昭和40〜42 | 39.8 | 56.8 | 3.4 | 12.5 | 80.7 | 6.8 |
昭和54〜55 | 44.2 | 45.6 | 10.2 | 6.1 | 81.6 | 12.2 |
平成5〜6 | 41.5 | 54.3 | 4.3 | 12.8 | 83.0 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 45.6 | 53.3 | 1.2 | 16.3 | 82.2 | 1.5 |
質問15/16は、家族関係の中で祖父母との同居経験について尋ねた結果である。全体では、父方の祖父母とは約45%が同居経験をもっているが、母方の祖父母とは約14%にとどまっており、父系の拡大家族が形成されていたと推測できる。父方・母方いずれも同居率は、新潟女子短大卒業生の方が若干低い傾向にあった。このことから、回答者の家族形態が必ずしも核家族のみで形成されているわけではなく、拡大家族の経験者はむしろ増加傾向にあることが示唆された。
【学校・学科別】 | よく言われた | 時々言われた | ほとんど言われなかった | 無回答 |
---|---|---|---|---|
全体 | 43.2 | 43.5 | 10.8 | 2.5 |
*新潟女子短大在学生計 | 16.8 | 45.3 | 6.9 | 1.0 |
生活科学科生活科学専攻 | 26.4 | 66.0 | 3.8 | 3.8 |
食物栄養専攻 | 51.4 | 44.3 | 4.3 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 42.4 | 45.9 | 10.6 | 1.2 |
幼児教育学科 | 43.4 | 52.6 | 3.9 | 0.0 |
英文学科 | 51.4 | 41.3 | 6.7 | 0.6 |
国際教養学科 | 50.3 | 39.6 | 8.8 | 1.3 |
*新潟女子短大卒業生計 | 38.3 | 41.0 | 14.0 | 6.7 |
昭和40〜42 | 35.2 | 45.5 | 15.9 | 3.4 |
昭和54〜55 | 31.3 | 43.5 | 15.0 | 10.2 |
平成5〜6 | 52.1 | 33.0 | 10.6 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 41.4 | 42.6 | 14.8 | 1.2 |
質問18は、親子関係にみる親からの期待の中で、家事労働について尋ねた結果である。全体では、親から家事を手伝うように「よく言われた」「時々言われた」がほぼ同率で、あわせて9割近くを占めた。学校・学科別では、新潟女子短大卒業生の方が在学生よりも低い傾向にあった。「ほとんど言われなかった」割合は、卒業生の年齢が高くなるほど増加していた。新潟大学在学生が新潟女子短大在学生よりも低い傾向にあるのは、回答者の約半数が男性であることに起因すると考えられる。
【学校・学科別】 | 毎日規則的に手伝った | 時々気が向くと手伝った | ほとんど手伝わなかった | 無回答 |
---|---|---|---|---|
全体 | 25.5 | 57.9 | 14.0 | 2.6 |
*新潟女子短大在学生計 | 24.3 | 61.1 | 13.7 | 1.0 |
生活科学科生活科学専攻 | 18.9 | 66.0 | 11.3 | 3.8 |
食物栄養専攻 | 28.6 | 62.9 | 8.6 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 30.6 | 62.4 | 5.9 | 1.2 |
幼児教育学科 | 19.7 | 69.7 | 10.5 | 0.0 |
英文学科 | 22.3 | 60.3 | 16.8 | 0.6 |
国際教養学科 | 25.2 | 54.7 | 18.9 | 1.3 |
*新潟女子短大卒業生計 | 30.7 | 47.7 | 14.9 | 6.7 |
昭和40〜42 | 37.5 | 48.9 | 10.2 | 3.4 |
昭和54〜55 | 29.9 | 42.2 | 17.7 | 10.2 |
平成5〜6 | 25.5 | 55.3 | 14.9 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 22.8 | 61.8 | 13.9 | 1.5 |
では、実際に家事を手伝ったかどうか尋ねたのが、質問19である。全体では、4分の1しか「毎日規則的に手伝っ」ていなかったことがわかった。学校・学科別では、新潟女子短大卒業生の方が在学生よりも「毎日規則的に手伝う」割合が高かった。特に、昭和40〜42年卒業生で高くなっていた。しかし、「ほとんど手伝わなかった」割合は、卒業生・在学生(新潟女子短大・新潟大学)ほぼ同率であり、若年層が手伝っていないわけではなかった。
質問20は、親子関係にみる親からの期待の中で「らしさ」に対する望みについて尋ねた結果である。全体では、「強く望まれていた」「どちらかと言えば望まれていた」の合計と、「あまり望まれていなかった」「全く望まれていなかった」の合計とが、ほぼ半々を占めた。
【学校・学科別】 | 強く望まれていた | どちらかといえば望まれていた | あまり望まれていなかった | 全く望まれていなかった | 無回答 |
---|---|---|---|---|---|
全体 | 7.4 | 41.3 | 38.2 | 10.4 | 2.6 |
*新潟女子短大在学生計 | 6.9 | 40.8 | 41.8 | 6.3 | 1.1 |
生活科学科生活科学専攻 | 5.7 | 34.0 | 47.2 | 9.4 | 3.8 |
食物栄養専攻 | 2.9 | 58.6 | 32.9 | 5.7 | 0.0 |
生活福祉専攻 | 3.5 | 38.8 | 45.9 | 10.6 | 1.2 |
幼児教育学科 | 9.2 | 32.9 | 48.7 | 9.2 | 0.0 |
英文学科 | 6.1 | 42.5 | 41.9 | 8.9 | 0.6 |
国際教養学科 | 10.7 | 38.4 | 38.4 | 10.7 | 1.9 |
*新潟女子短大卒業生計 | 9.1 | 44.1 | 33.4 | 6.7 | 6.7 |
昭和40〜42 | 13.6 | 46.6 | 30.7 | 5.7 | 3.4 |
昭和54〜55 | 6.1 | 42.2 | 35.4 | 6.1 | 10.2 |
平成5〜6 | 9.6 | 44.7 | 33.0 | 8.5 | 4.3 |
*新潟大学在学生計 | 6.8 | 39.6 | 36.1 | 16.0 | 1.5 |
表から、学校・学科別に比較すると、新潟女子短大卒業生の方が在学生よりも「女/男の子らしく」育つように望まれていた傾向にある。特に、昭和40〜42年卒業生にその傾向が強い。新潟女子短大在学生では、学科・専攻で異なる傾向が現れた。「女/男の子らしく」育つように望まれていた傾向が強かったのは、食物栄養専攻であり、逆にその傾向カ溺かったのは生活科学専攻、生活福祉専攻、幼児教育学科であった。新潟大学在学生の特徴は、「全く望まれていなかった」割合が高い点である。
ここでは、ドレイヤー(D.A.Dreyer)らの性役割志向性尺度(ISRO)を用いて回答者の男女意識(ジェンダー観)を測定した結果について述べる。合計16項目(質問22〜37)が設定されており、回答を採点コードに従って得点化した。得点の範囲は16〜80点となっており、得点が高いほどフェミニスト的で男女平等意識が強く、ジェンダー・フリーであることを意味している(*)。
(*)D.A.Dreyer, N.F.Woods, and S.A.James, "ISRO: A Scale to Measure Sex-Role Orientation", Jurnal of Sex Rolesに基づいている。詳細は、東清和、小倉千加子『性役割の心理』大日本図書、1984、pp。158-167
ISROの平均値は、新潟女子短大在学生が60.98点(SD:6.77)、卒業生が60.72点(SD:8.65)、新潟大学在学生が59.65点(SD:8.41)で、大きな差は認められなかった。新潟女子短大在学生の学科・専攻別の比較では、最も高得点だったのは生活福祉専攻の63.07点(SD:5.90)で、逆に低かったのは食物栄養専攻の59.17点(SD:6.62)であった。
図は、ISRO得点の分布を示したものである。ここから、新潟女子短大在学生は得点分布の集中度が高く、51〜70点に85%以上が該当していることがわかる。一方、卒業生では衙点のばらつきが相対的に大きくなっており、50点以下の低得点者、71点以上の高得点者ともに在学生より割合が高い。卒業年度別に特徴を挙げると、昭和40〜42年卒業生の低得点者の割合が14.8%と高く、昭和54〜55年卒業生の高得点者の割合が20.4%と高かった。
また、新潟大学在学生は、50点以下の割合が比較的高く、性役割に縛られている傾向が示唆された。調査対象である新潟大学在学生のうち、約半数は男性の回答である。男性のISROの平均値は57.08点(SD:8.39)で、女性全体の平均値61.09点(SD:7.52)と比較して相対的に低いため、図の結果は、男性の性役割意識の強さに起因していると考えられる。今回の分析では、性別によるクロス集計結果の詳細な比較までは実施していないが、注目すべき傾向であり後の研究課題に譲りたい。
【グループ】 | 16〜50点 | 51〜60点 | 61〜70点 | 71〜80点 |
---|---|---|---|---|
新潟女子短大在学生 | 7.1 | 39.2 | 46.5 | 7.2 |
新潟女子短大卒業生 | 10.3 | 39.5 | 35.0 | 15.2 |
新潟大学在学生 | 16.3 | 37.0 | 38.2 | 8.6 |
今後、以上述べてきた結果を詳細に分析し、さらに多角的な考察を試みたいと考える。各年代の女性のジェンダー観がどのような要因で形成されているのか、男性と比較したときにどのような特徴が見られるのか、所属学科・専攻によって何らかの違いが現れるのか……等、興味深い仮説の検証を実施していく予定である。
最後に、今回の調査にご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げて、調査研究の報告としたい。
(渡邊令子、鈴木真由子)
E-mail: iori@……
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最終更新日:2013/07/24