第1条 (この法律の目的)
この法律は、両性間の平等な地位を促進し、女性の地位の向上を特別な目的とするものとする。
公的機関は、すべての社会的領域において両性間の平等な地位に対する権利のための条件を整えなければならない。
女性と男性は、教育、労働並びに文化的及び技術的向上において均等の機会を与えられなければならない。
第2条 (この法律の適用範囲)
この法律は、宗教的共同体の内部関係を除くすべての分野に適用される。
家庭生活及び完全に個人的な関係への適用に関しては、第10条に定める機関は、この法律を実施しないものとする。
国王は、特別な場合には、特定の領域においてこの法律を全部又は一部適用しないことを定めることができる。かかる決定を行うにあたっては、委員会(第10条参照)から意見を聴取しなければならない。
第3条 (総則)
女性と男性との異なる取扱いは、許されない。
異なる取扱いとは、性が異なることを理由として女性と男性を不平等にする措置をいう。不当に一方の性別がもう一方の性別よりも不利になるように事実上作用する取扱いも、また、異なる取扱いとみなす。
この法律の目的に従って両性間の平等な地位を促進する不平等な取扱いは、第1項に規定に反しない。女性と男性との間に存在する不平等な状況に由来する女性の特別な権利についても、同様とする。
第4条 (雇用等にあたっての平等な地位)
明らかな理由が存する場合を除き、ある職が一方の性別にのみ開かれていると広告してはならない。雇用者がその職について一方の性別を期待し又は好む印象を広告に与えてはならない。
雇用、昇進、解雇又は一時帰休にあたっては、第3条に反して女性と男性に差をつけてはならない。
広告された職を得られなかった求職者は、雇用者に対し、他の性別の採用された者が、いかなる教育、経験その他はっきりと証明する事のできる当該労働のための資格を有するか書面で通知するよう要求することができる。
第5条 (同一価値の労働に対する平等な賃金)
同一雇用者に雇用される女性と男性は、等しい価値の労働に対し、等しい賃金を受けなければならない。
賃金とは、基本的な労働報酬及び他のあらゆる手当若しくは金銭による利得その他雇用者より与えられる物品をいう。
平等な賃金とは、性別にかかわらず賃金を女性及び男性に同一の方法で定めることをいう。
国王は、規則で、国及び市町村(コミューン)において同一雇用者とみなされるべきものを規定する細則を定めることができる。
第6条 (職業教育に対する等しい権利)
女性と男性は、職業教育に対し、同一の権利を有する。
雇用者は、訓練、再教育及び職業教育等に関する休暇につき、女性と男性とを平等に取り扱わなくてはならない。
職業又は専門職における両性間の均衡の欠如を是正するために適切であると思われるときは、その他の点では概ね平等であることを条件に、課程、学校及び研究への参加並びに当該職業又は職への新規採用を目的とするその他の努力について、一方の性別を優遇することができる。
第7条 (教材)
学校その他の教育施設で使用する教材は、両性間の平等な地位に基づくものでなくてはならない。
第8条 (組合)
組合は、次の各号のいずれかに該当する場合には、女性と男性に平等な条件で開かれていなければならない。
1.組合の構成員であることが、各構成員の職業上の機会又は技能の向上にとって重要であるとき。
2.組合の主たる目的が、一般的な社会問題の解決に貢献することであるとき。
前項の規定は、主たる目的が一方の性別の部分的な利益を促進することにある組合には、適用しない。
第9条 (平等審議会)
国王は、議会がその度ごとに指定する職務及び複数の構成員を有する平等審議会を設置する。
第10条 (この法律の適用)
国王は、この法律の実施に寄与する平等オンブズマン(Ombud)及び委員会、すなわち平等な地位のための不服審査委員会を任命する。当該オンブズマン及び当該委員会の活動範囲は、第2条第2項に定める限度内で、すべての私的活動並びに公共の行政及び企業活動を対象とする。オンブズマンは、6年を任期として国王がこれを任命する。
委員会では、個人の代替委員を伴う7名の委員で構成されるものとする。代替委員を伴う委員のうち2名は、それぞれ、ノルウェー労働者同盟及びノルウェー経営者連盟からの推薦に従い任命される。国王は、そのうち一名は裁判官のために定められた条件を備えた議長及び副議長を任命する。
国王は、オンブズマン及び委員会の活動及び組織について細則を定めることができる。委員会の意見は、事前に聴取しなければならない。
第11条 (オンブズマン及び委員会の活動)
オンブズマンは、両性の平等な地位のため、この法律の規定に違反する行為のないように監督を行わなければならない。オンブズマンは、自発的に又は他の者からの要求に基づき、この法律の規定が遵守されるために活動するよう努めなければならない。自主的な解決が得られないときは、オンブズマンは、第13条による措置を講ずるよう、委員会に事件を送付することができる。
オンブズマンが事件を委員会に提訴しないことを決定したときは、事件の当事者又は当事者以外で事件を提起した者は、当該事件を提訴することができる。かかる事件は、被害者がこれに反対する場合を除き、委員会が処理しなければならない。
委員会は、オンブズマンにさらにより詳細に特定された事件を委員会に提訴するよう請求することができる。
第12条 (オンブズマンの決定)
オンブズマンが自主的な解決を得られず、かつ、委員会の決定を待つことにより不利益又は有害な影響がもたらされると思われるときは、オンブズマンは第13条に定める決定を行うことができる。
オンブズマンは、決定を行うにあたり、当該決定の理由を付さなければならない。決定は、委員会に通知されなければならない。決定については、委員会に不服の申立てをすることができる。
第13条 (委員会の裁決)
委員会は、両性間の平等な地位に関して侵害が発生すると判断したときは、第3条、第4条、第5条、第6条、第7条及び第8条に違反する行為を禁止することができる。委員会は、当該行為の停止を確保し及び当該行為の反復を防止するために必要な措置について命令を発することができる。第2項により決定を行うことができないとき、委員会は、提訴の対象となった事情がいかなる範囲でこの法律に違反するかに関する意見を示さなければならない。
委員会は、他の者が行った行政決定を取り消し又は変更することができない。委員会は、また、この法律に違反しないために行政決定を行う権限をいかに行使しなければならないかに関する命令を発することができない。行政決定とは、行政法第2条第1項a号の対象とされる裁決をいう。委員会は、国王又は行政庁を拘束する決定を行うことができない。
委員会は、決定を行うにあたって、理由を付さなければならない。
国王又は行政庁は、委員会の決定を再審査することができない。ただし、この決定についてこの法律の範囲内で十分に事件を審査するために裁判所に提訴することはできる。
第14条 (労働裁判所に対する委員会との関係)
賃金協約の有効性、解釈又は存在に関する問題を間接的に提起する事件が、この法律に従って委員会に提訴されたときは、賃金協約の各当事者は、効力の発生を中断させて、このような問題について労働裁判所の判断を求めることができる。国王は、かかる訴訟に関する細則を定めることができる。
委員会は、いかなる場合であれ、1927年5月5日の労働紛争に関する法律及び1958年6月18日の公務の紛争に関する法律第2号に従い労働裁判所の管轄に属する裁決を行うことができない。
第15条 (情報提供義務)
公的機関は、職業上の秘密を侵害せずに、オンブズマン及び委員会にこの法律の施行に必要な情報を提供する義務を負う。このような情報は、また、紛争法に従い証言義務を負う他の者が要求することもできる。紛争法第211条は、これを準用する。紛争法第207条第3項、第208条第2項、第209条第2項及び第209a条第3項に規定する判決は、地方裁判所又は簡易裁判所が下す。
委員会及びオンブズマンは、この法律による職務を遂行するために必要とみなす調査及び検査を実施することができる。必要な場合には、警察の援助を要求することができる。
委員会又はオンブズマンは、この法律の実施にあたり協力を命ぜられるほかの公的団体に対し、情報を提供し又は調査を行うよう要求することができる。
第16条 (職業上の秘密)
委員会又はオンブズマンのために公務又は労働を行うすべての者は、合理的理由がある場合を除き、公務又は労働を行うことのなかから知り得た次に掲げる事項についての知識を他の者に知らせてはならない。
1.ある者の個人的事情。
2.他の企業が当該情報にかかわる企業に損害を与えて、自己の経営に利用するおそれのある技術的設備、製造方法、計画および予測等。
情報は、また、関係者自身の活動にも利用することができない。
第17条 (損害賠償責任)
故意又は過失によるこの法律の規定の違反行為により、損害を与えたものは、一般的な規定に従い損害賠償の責任を負う。
裁判所は、著しく悪質と判断する場合又は他の正当な事由がある場合には、前項による責任を適用することができる。
第18条 (刑事責任)
故意若しくは過失により第12条若しくは第13条に従って行われた決定に違反した者又はこれを幇助した者は、罰金を科する。
下位の地位にある者が犯した違反行為は、当該違反行為が本質的にその者のために当該行為が行われたところの者に対し下位の関係にあることに帰せられるときは、罰せられない。
第15条に従い発せられた義務に故意又は過失により違反する行為は、罰金若しくは3か月以下の禁固に処し又はそれを併科する。第16条第1項についての違反行為は、義務者が公務員でないときは、刑法第121条により罰せられる。第16条第2項についての違反行為は、罰金若しくは1年以下の禁固に処し又はそれを併科する。
第19条 (告訴)
国は、第18条第1項から第3項までの違反行為を、公共上の理由から必要とされる場合を除き、委員会の要求の無いときは告訴しない。
検察庁は、刑事事件に関連して、違法行為の中止を保証し及びその反復を防止するための措置に係る判決を求めることができる。
第20条 (この法律の地理的適用領域)
この法律は、王国、スヴァールバル並びにいかなる国の高権にも服さない領域にあるノルウェーの船舶及び航空機内で適用される。この法律は、また、大陸棚のノルウェー部分にある建造物及び施設における活動にも適用される。
国王は、前項の例外を設け、法律の適用領域に関する補足規定を定めることができる。このような決定にあたっては、委員会の意見を聴取しなければならない。
第21条 (すべての公的委員会等における両性の参加)
公的機関が4名以上の構成員を置く委員会、執行委員会、審議会、評議員会等を任命又は選任するときは、それぞれの性が構成員の40パーセント以上選出されなければならない。4名未満の構成員を置く委員会においては、両性が選出されなければならない。この規定は、また、代替の構成員にも適用される。
前項の要件を充たすことが明らかに不当であるとする特別の事情があるときは、前項の規定の例外とすることができる。
この条の規定は、直接に選挙された会議体のみから法律により構成員を得なければならない委員会等には、適用しない。当該選挙が比例代表選挙で行われるときは、第1項の規定は、適用しない。ただし、このような選挙においても、できる限り両性が平等に代表されることを目指さなければならない。
行政庁の定める細則に従い、市町村及び郡は、平等オンブズマンに対し、選挙され又は任命された委員会等に関する報告書を送付しなければならない。平等オンブズマンは、任命又は選任機関に対し、この条による要件を充たしているかについての自らの評価を表明することができる。平等オンブズマンは、個別の委員会の構成に関する不服申立てを棄却し又は却下することができる。平等オンブズマンの裁決は、不服審査委員会に不服申立てをすることができない。任命又は選任機関は、平等オンブズマンの意見に従い、完全な法的効果のある新たな選挙又は新たな任命を行うことができる。平等オンブズマンは、報告書にもとづき、総合的評価を下す。
国王、行政庁その他の国の機関によって任命される委員会等については、国王は、実行及び報告に関する規定を定めることができる。
この条の規定は、異なる取扱いに関するこの法律の規定による公的委員会等における選出にその他適用される規定においていかなる制限も課さない。
国王は、この条の施行規則を定めることができる。
第22条 (施行等)
1.この法律は、国王の指定する期日から施行する。
2.この期日から、1972年6月16日法律第47号市場統制に関する法律第一条には以下の第二項(新項)を加える。
《広告主、および広告物を創作する者は、広告行為が両性間の生得の平等に抵触せず、いずれの性に対する侮蔑的な判断をも意味せず、または女性ないしは男性に対する攻撃的な表現とならないよう、保証しなくてはならない》。
(木下淑恵 1996年翻訳、石川伊織追補)
E-mail: iori@……
Anschrift ; Iori Ishikawa,
UNIVERSITY OF NIIGATA PREFECTURE,
471 EBIGASE NIIGATA-City,
950-8680 JAPAN
新潟県立大学国際地域学部国際地域学科・石川研究室
950-8680新潟市海老ケ瀬471番地
メールアドレスは上記E-mail表記の@のあとに、unii.ac.jpをつけてください。
最終更新日:2013/07/24