授業紹介


新潟県立大学の健康栄養学科は管理栄養士養成施設であり、私は「基礎栄養学」を中心に栄養と食についての科目を担当しています。
(担当科目の詳細については、大学の教員データベースオンラインシラバスを参考にしてください。)

栄養というと「栄養指導」を思い浮かべますが、その実際を学ぶ前にまず最初に「栄養」とはどのようなものかを理解する必要があります。
栄養は「栄養素」と同じ意味ではなく、また単に「栄養素のバランス」のことでもありません。生きていくために体に必要な物質を取り入れて不要物を排泄し、体の中で栄養素を材料に分解と合成を行う(すなわち、代謝する)ことによって生命を維持し成長する、その体のしくみそのものです。
これを正常な状態で維持する(つまり、健康に生きていく)ことが「栄養」です。
この体の「恒常性(ホメオスタシス)」がどのように保たれているのかを理解できれば、肥満だけでなく適正体重以下にやせることがなぜ危険なのかについてもわかると思います。

基礎栄養学では、生きて行くためには栄養素がなぜ必要なのか、栄養素はどのように消化吸収され、体でどのように代謝されるのかという、この栄養の基本を学びます。
近年、このような「基礎」が軽視される傾向があるため、「なぜこの科目を理解しなければならないのか分からない」という人もいるかもしれません。

しかし、知識を身につけただけの人が役に立たないのと同様に、実践だけを習得して基本的な知識が身についていない人も非常に危なっかしいものです。
これは論語の「学而不思則罔、思而不学則殆」(学びて思わざればすなわちくらし、思いて学ばざればすなわちあやうし)という言葉にも通じるもので、「管理栄養士」という専門家になろうとする人は、あやふやな知識をもとに疑似科学に惑わされたり非科学的な指導をすることのないよう、まず最初にしっかりとした基礎知識を身につけて欲しいと願っています。

それとともに、「食べ物」とその働きについて学ぶ楽しさも伝えられるような講義を行いたいと思っています。


アイ・ケイコーポレーション 基礎栄養学
教科書

アイ・ケイコーポレーション 「基礎栄養学」
ISBN: 978-4-87492-373-3

駒井三千夫・正木恭介編
(12章の「脂質の栄養」を執筆しています。)