雪利用食品について
新潟県立大学健康栄養学科の曽根研究室と神山研究室は、雪中貯蔵を中心に雪利用食品に関する研究を行っています。
(新潟県立大学における研究の詳細については、日本家政学会誌72巻1号47-53の紹介記事「雪利用貯蔵による食品の新しい高付加価値化」をご参照ください。)
雪中貯蔵(雪室貯蔵)は雪を冷房資源として利用する保存方法であり、北陸地方や東北地方などの多雪地域で古くより行われてきました。
近年では雪や氷を利用する「氷雪冷却エネルギー」が二酸化炭素を排出しない環境に優しい冷熱エネルギーとして注目されていますが、雪中貯蔵も外部エネルギーを必要とせずに農作物の保存に好適である低温・高湿度(室温0~2℃、湿度90%以上)の環境を保つことができます。
さらに、雪下や雪中に保存した食品はその食味が向上することも知られています。たとえば、収穫しないまま雪下に保存したにんじん(雪下にんじん)や雪中保存したじゃがいもなどは、「低温馴化」と呼ばれる現象により遊離糖や遊離アミノ酸などが増加し、甘味・旨味が増加することが報告されています。
新潟県立大学では、加工食品を中心に雪利用保存の有効性について検討してきました。
たとえば、雪室熟成を行ったコーヒー豆は、香気成分の中でも刺激的な臭いを含むアルデヒド類が減少し、甘い香りや香ばしい香りを含むピラジン類とコーヒーらしい香りを含むフラン類の割合が上昇することにより、コーヒーの呈味が改善されて「まろやかな」苦味になることを示しました(曽根他、Trace Nutrients Research 31: 12-16, 2014) 。
また、雪室に貯蔵した小麦粉は脂質の酸化が抑えられることにより常温保存や冷蔵庫保存のものよりも製パン性に優れており、作成したパンの官能評価も良好であることも報告しています(神山他、日本食品工学会誌 18(1): 19-24, 2017)。
その他にも、新潟県妙高市の辛味調味料である「かんずり」ではとうがらしを「雪さらし」することによって抗酸化性が増加することや(人間生活学研究 5: 1-7, 2014)、チーズの保存と低温熟成における雪室利用の有用性(日本食品工学会誌 19(3): 137-144, 2018)、新潟県津南町の新しい「雪下にんじん」である雪下京くれない(雪くれない)にんじんの食味と成分、機能性(Trace Nutrients Research 35: 58-65, 2018)などについても明らかにしています。
このように、新潟県立大学では既存の雪利用食品の有効性を確かめるとともに、食味のみならずその機能性にも着目した新しい雪利用による高付加価値食品の開発を試みています。
(2017年11月「マッチングフォーラムinにいがた」での発表資料の一部)