歩いて学ぶ、人とふれあうフィールドワーク
小谷 一明 教授
国際地域学部 国際地域学科
専門分野:環境文学・文化、アメリカ文学・文化
担当授業:フィールドワークB(水俣)
公害スタディーズ@阿賀+水俣
9月半ばに3泊4日で熊本県の水俣市を訪問します。不知火海(八代海)に面した小さな漁村をめぐり、そこで半世紀以上も前に起きた公害事件を学んでいきます。どのような場所で公害が起きたのかを知ることが学びの第一歩、まずは人々の暮らしにふれながら、公害以前を想像していきます。その後で患者さんと支援者のお話を聞いたり、資料館を見て回ります。歩く中で留意したいのが、自然です。メチル水銀中毒はヒトだけに被害を及ぼしたわけではありません。魚、貝、鳥、豚など様々な生きものが被害を受けました。海が破壊されたことで埋め立てが始まり、子どもたちの遊び場、村人の心のよりどころもなくなりました。埋め立て地や渚を歩いて観察した体験を新潟に持ち帰り、阿賀野川バスツアーをしながら公害とは何かを新潟でも考えます。
環境の未来を考える力
環境は「地球の問題」となっていますが、それを身近な問題として受けとめていくためにはどうしたらよいのでしょうか。この点が重要となります。環境被害に遭った場所を訪れ、感じたことを土台とし、環境全体について考えていきます。授業では講演会や映画なども利用して公害問題と今の環境問題をつなげて考える様々な方法を学んでいきますが、その中から自分にあった学びの「入口」を見つけてもらいます。近代の環境破壊をふり返りながら、どのような言葉で、表現で水俣病被害の深刻さを伝えていくべきか。この問いに向き合いながら、未来に向けて環境を読み解く力、感受性を高める方法を模索してもらいます。
旅人になる学生が続出!
水俣に行く、阿賀野川流域を訪れることで、旅人になる学生がたくさん生まれています。授業にお招きする映画監督のお話を聞いて、映画を観た後に東日本大震災で津波被害にあった海沿いへと旅立つ人、新潟生まれの水俣市のおばあさんに生まれ故郷の写真を送るため上越まで足をのばす人など。身近な旅もたくさん生まれていて、阿賀野市のお地蔵さんに会いに行ったり、「水」への関心を深めて潟めぐりをする人もいます。こうした旅人が経験を持ち寄り、授業での話し合いに深みのある彩りを添えています。歩きながら学ぶという点では授業外の学びがたくさん、これぞ自主的な学習と言えるのではないでしょうか。