「こどもまんなか」社会の実現に向けた研究を目指して

研究紹介・研究室紹介 2024年10月25日

植木 信一 教授

人間生活学部 子ども学科
専門分野:社会福祉学、児童福祉
担当科目: 社会福祉論、新潟県の子ども・子育て支援、ソーシャルワーク演習、ソーシャルワーク実習・実習指導

 みなさん「小1の壁」というフレーズを聞いたことがありますでしょうか。保育所等に通っていたこどもが、小学校に上がると放課後児童クラブ(学童保育)に通うことになるのですが、いわゆる「保育所落ちた」といったことと同様に「学童落ちた」という現象が起こることをいいます。保育ニーズに対して施設数や職員数が足りないことから、必要なのにこどもが施設に入れないというジレンマが生じるのです。このままでは、こどもたちの安全・安心な放課後を保障することができず「こどもの最善の利益」に反します。このような課題をどのように解決すれば「こどもの最善の利益」につながるのかを考えることが、私の研究です。

 そこで、国の調査研究事業に参加して、各自治体や運営法人における放課後児童クラブにかかわる職員の人材確保・資質向上に向けた取り組みの実態把握を行い、今後の取り組みの方向性を提言することを目的として、アンケート調査及びヒアリング調査を実施しました。この研究で明らかになった課題は提言としてまとめられ、国の施策に活かされることになります。大学で行われる研究は、私たちの生活に活かされるのです。これは、大学の教員だけのことではありません。学生たちも卒業研究をとおして、自分たちの学んできた4年間の努力が、自分たちの生活に活かされることを実感します。

 ところで、みなさんは「こどもまんなか」というフレーズをご存じでしょうか。私は、こども家庭庁の「こどもの居場所づくり部会」という審議会に参加して、「こどもの居場所づくりに関する指針(答申)」(2023年)の作成に関わりました。この指針の中で、「その場や対象を居場所と感じるかどうかは、こども・若者本人が決める」という一文が明記されました。とても大切な考え方だと思います。これまでおとなたちは、「こどものため」と言いながらおとなの価値観だけで物事を決めてきました。私自身のこれまでの研究姿勢への自戒も込めながら、これからは「こどもまんなか」社会の実現に向けた研究をすすめていきたいと思います。