途上国の発展戦略から日本の地域経済の活性化へ

研究紹介・研究室紹介 2024年10月25日

黒岩 郁雄 教授

国際経済学部 国際経済学科
専門分野: 地域経済学、東アジアの経済発展
担当科目: 哲学、哲学・倫理学、哲学演習、現代文化論、原書講読[フランス語]、比較文化と越境的想像力

 最近まで力を入れていた研究分野は、東アジアの地域統合とグローバルバリューチェーン(GVC)です。途上国の発展戦略は、1990年代に大きく変わりました。情報通信革命や貿易自由化、地域統合によってGVC が発展し、その結果多くの途上国における経済発展や貧困削減に貢献しました。

 その中で生まれた開発の概念が、GVC への参加と高度化です。途上国のGVCへの参加によって、これまで先進国を中心に行われていた企業の生産活動(生産工程)が分割されて、それぞれの国の優位性に応じて再配置されます。特に途上国では労働力が豊富なので、労働力を多く雇用する活動(製品組み立て、検査等)が割り当てられます。しかし、付加価値の低い活動ではそれ以上の発展は望めません。そのため、途上国は能力を高めて、より付加価値の高い活動(製品開発、部品生産、販売、保守等)に移行する必要があります。

 私の研究では、GVCの参加には、所得水準の上昇に伴い一定のパターンがあること、GVC の高度化は、輸入代替による国内生産ではなく輸出拡大によって達成する方が有効である、ことなどが分かりました。

 これに続く研究テーマとして、以下の研究に取り組んでいます。一つは、米中対立の影響です。米中対立は米国、中国のみならず、日本を含めた周辺諸国の貿易・産業に大きな影響を与えています。新しい論文では米中対立によるサプライチェーンの再編が我が国の地域経済にどのような影響を与えるのか分析しました。もう一つの研究は新潟県内の市町村を対象にした地域経済循環分析です。この研究では、新潟県内の市町村の生産⇒分配⇒支出の経済循環構造を類型化し、地域経済の自立度を高める方策について考えています。

 以上のように、最近になって研究分野は大きく変化してきました。今後は、新潟県をはじめとした日本の地域経済の活性化や国際化をテーマに考えていきたいと思います。このように研究テーマが変化した背景には、私が地域経済学を専門としてきたことの他に、大学で(東アジア経済以外に)地域経済に関する講義や専門演習(ゼミ)を担当していることがあります。特に専門演習では、学生から刺激を受けることもあり、新潟県を中心に地域経済の問題について考えるよいきっかけになりました。これからは現地調査も行いながら、地域経済の活性化に取り組んでいきたいと思います。