平成30年度
平成30年度入学式式辞
新潟県立大学に入学された273名の皆さん、入学おめでとうございます。本学の役員・教職員一同を代表いたしまして、新入生の皆さん、そして皆さんを支えてこられました御家族や関係者の皆様に心よりお祝い申し上げます。高井新潟県副知事をはじめ御来賓の皆様には、御多忙の中にもかかわらずご列席を賜り、厚くお礼申し上げます。
決して容易ではない入学試験を経て本日入学された皆さんは、これからの大学生活への期待をもって新たなスタートラインに立っていることと思います。そうした皆さんをお迎えし、これから新潟県立大学の仲間として共に活動できることを大変嬉しく思っています。
皆さんのホームグラウンドとなる本学の沿革は55年前に創立された県立新潟女子短期大学に溯ります。その後40年以上にわたり、子どもの教育、食と栄養の教育、国際社会や地域社会を理解する専門教育、国際的コミュニケーションに不可欠な外国語教育を重ねてきました。その成果は10年前に開学した新潟県立大学に引き継がれ、この間、新潟県民の大きな支援の下に知の拠点として本学は大きく発展して参りました。これからの4年間は皆さんが樹木のようにあらゆる方向に伸び拡がる時期ですが、それにふさわしい教育内容を皆さんに提供できるものと考えています。
今日から大学生活が始まる皆さんは、これまでとは違う環境を感じていると思います。大学は知の拠点です。論語に「知るを知るとなし、知らずを知らずと為せ。是知るなり」との言葉があります。学んで理解したことと、理解できていないこととをきちんと区別できることが真に知ることにつながります。大学生活においては、知識の修得に留まらず皆さん自身の頭脳で深く考えることが重要であると思います。
大学生活をスタートするにあたり皆さんが先ず始めることは、自らの履修プログラムを構築することです。これまでの受け身の学びから脱皮し、自らの課題を意識しながら積極的な学びを展開してほしいと思います。そうした皆さんに対して本学の教職員は惜しみないサポートをいたします。
新潟は日本海を挟んでロシア、中国、韓国をはじめとする東アジアと直接向き合っています。この地にある本学には東アジアを中心とすると国際関係に関して多くの蓄積が有ります。本学の教育陣は皆さんの期待に間違いなく応えてくれるはずです。国際交流を深めるには異なる歴史、文化、社会、言語を理解する語学力とコミュニケーション力が不可欠です。昨日の新聞報道にもありますように、本学では外国語教育に特別の取組をしています。英語はもちろんのこと、ロシア語、中国語、韓国語を皆さんが修得する上において、他に誇る教育プログラムを用意しています。基礎力を身につけたら、さらなる語学力を鍛えるために、実際に海外において学ぶ機会にも挑戦して下さい。
子どもの教育や健康・栄養に関する分野では特に実践性が重要とされます。皆さんには高い専門性と実践性を磨くための周到な教育プログラムが用意されています。専門的知識を身につけるだけでなく、少子化高齢化が急速に進む社会において予想される教育や健康に関する新たな課題に向き合ってほしいと思います。
さらに皆さんには、日々の学びだけでなく、4年後の自分の姿を考えながら歩んでほしいと思います。長期的な視野を持ち、大学生活を通じて、皆さんがそれぞれの分野において自らを誇ることのできるプロフェッショナルを目指して、基礎力を養うことを期待しています。
大学生活は健康で豊かな人間性を育む機会でもあります。キャンパスには、新潟県内はもちろんですが、全国各地から学生が集います。海外からの留学生も学びます。人文社会科学を学ぶ友人、人間生活にかかわる専門分野を学ぶ友人など、多様な友人とふれ合うことになるでしょう。「自分と異なる人間と接することの価値、なじみのない思想や行動様式に出会うことの価値は、どんなに高く評価してもし過ぎることはない」と述べたのはイギリスの思想家、ジョン・スチュアート・ミルです。大学生活を通じて、異なる考え方を持つ友人達と知り合い、さらには、学びを通じて国際社会との交流を深めて頂きたいと思います。そして、皆さんには何よりも健康であってほしいと思います。健康に留意しながら、お互いを尊重し、協力しながら社会を支えてゆく豊かな人間性を育んでほしいと思います。
皆さんが新潟県立大学の場において知力と人間力を蓄え、たくましく成長されることを楽しみにしております。
ご入学、誠におめでとうございます。
平成30年4月6日
新潟県立大学学長 若杉 隆平
平成30年度卒業式・修了式告辞
本日、新潟県立大学を卒業される学士253名の皆さん、卒業おめでとうございます。ご臨席を賜りました市川 新潟県総務管理部副部長、飯田 新潟県高等学校長協会会長をはじめとするご来賓の皆様、列席の副理事長・理事・監事、経営評議会委員、副学長、学部長、教職員一同とともに心からお祝いを申し上げます。
皆さんが卒業の日を晴れて迎えることができたのは、もちろん皆さん自身の研鑽によるものですが、この日に至るまでの長い年月にわたり、皆さんの成長を支えてこられたご家族の方々の御支援はなくてはならないものであったと思います。ご家族の皆様にも心よりお祝いを申し上げます。また、学生への支援をはじめ本学の教育研究に日頃からお力添えを下さいます関係者の皆様に心よりお礼を申し上げます。
今、皆さんは入学から今日の日を迎えるまでの間の学生生活を想い返していることと思います。教師との出会い、友人達との触れ合いは、これからの人生にとって大きな糧となることでしょう。また、知的な探究の場でのトレーニングは、皆さんを鍛え、長い人生を生きる力を養う上で得がたい機会となったことでしょう。皆さんは今、気持ちを新たに門出の日を迎えていることと思います。
間もなく平成の時代が終わりを告げ、新たな元号の時代を迎えます。皆さんは平成最後の卒業生になります。平成の時代は日本経済が絶頂にあるときに始まりました。しかし、間もなくバブルが崩壊し、日本社会は様々な試練を迎えることになりました。金融破綻による経済的混乱に見舞われ、その後も長期にわたり活力の乏しい低成長経済の時代が続いてきました。東京への一極集中は、地方から東京への人口の流出を伴い、地方での人口減少を早めています。他方で日本社会では一層の多様化が進みました。進展する情報技術は、そうした多様化する社会を支え、新たな社会を創生するための基盤となりつつあります。
世界に目を向けると、地域紛争の激化や所得格差の拡大の結果、大量の移民が国境を越えています。東アジアでは中国経済が著しく発展してきましたが、経済や産業技術をめぐる米中間の覇権争いが貿易戦争に発展し、当事国だけでなく世界各国に影を落とし始めています。また、英国民がEUからの離脱を選択したことも大きな変化と言えるものでした。自国中心主義が台頭する結果、これまで営々と築いてきた自由な貿易システムが崩壊することに危機を感じますが、同時に、多くの人々が新たな国際協調の必要性を強く感じ始めていることも確かです。
皆さんには、社会の新しい一員としてこうした社会の変化に向き合い、次の良き社会を構築することが期待されています。ただし皆さんは、大学では必ずしも具体的課題に即した専門的技術的知識そのものを蓄積してきたわけではありません。むしろ、実在する事実をどのようにして見つけ出すか、それが真実であるか否かをどのようにして検証するか、その結果をどのような方法によって正しく表現し伝えるかを、知的訓練を積むことによって思考習慣として修得してきたはずです。素晴らしい教師と友人に恵まれ、また多くの方々のサポートを受けながら、穏やかで知的興奮に溢れる環境の下で、社会の一員として実践の場で活躍するための基礎力を鍛える時期を過ごしてきたといえましょう。
その上で、社会の中で自らが負うべき役割を担うのに必要とされる専門知識を得る教育を受けてきました。皆さんが身につけた内容は専門とする分野によって異なります。国際社会や地域社会を見通す洞察力、異文化をつなぐ言語力、子どもの教育や食と栄養に関する専門力など多岐にわたります。社会に出ても皆さんの学びは続き、専門知識は大きく蓄積されていくでしょう。大学において学んだことはそうした専門知識を体系化する上での基礎となるでしょう。 万全の準備が出来たと感じている諸君もいれば、もう少しやっておけば良かったと多少の不安を感じている諸君もいるかも知れませんが、これまでの大学生活で学び取ったものは、今後皆さんが人生の荒波に乗り出して行く上での確かな拠り所となることは間違いありません。
皆さんのこれからの人生は長い道のりになります。シェークスピアは“To climb steep hills requires a slow pace at first.”と述べています。これから険しい丘に登るには最初はゆっくり歩くことから始めて下さい。また、南アフリカ共和国大統領であったネルソン・マンデラは“The greatest glory in living lies not in never falling, but in rising every time we fall.”と話しています。生きる上で最も栄誉なことは、転ばないことでなく、転ぶたびに起き上がり続けることです。これまで鍛えてきた御自身への自負と勇気を持って長い人生を粘り強く歩み続けてほしいと思います。
皆さんのこれからの振る舞いや行動は、後輩達へのお手本となりメッセージとなるでしょう。一人一人の歩みは時が経つにつれて、時として友の歩みと交差することもあるでしょう。皆さんが将来、新潟県立大学の卒業生として誇りを持って先輩、同僚、後輩との出会いが出来ることを願っております。 本日は誠におめでとうございます。
平成31年3月19日
新潟県立大学長 若杉 隆平