令和2年10月

 

新入生の皆さんへ

 

 新潟県立大学に入学された皆さんには4月にビデオメッセージをお届けしましたが、ここにお集まりの皆さんにあらためて入学おめでとうと申し上げます。国際地域学部の皆さん、人間生活学部の皆さん、そして、この4月に新設された国際経済学部の第1期生として入学された皆さんを今ここにお迎えできたことをとても嬉しく思います。

 皆さんが入学された今年、我々はこれまで経験したことのない状況におかれています。100年前のスペイン風邪以来とは言え、何もなければキャンパスライフを謳歌できたはずですが、新型コロナ感染拡大によって、この6ヶ月、皆さんには実現出来ないことが数多くあり、口惜しい思いをされてきたことと思います。新型コロナ感染防止のためには、人との距離を保たねばならないし、思い切って大きな声を上げることもできません。その中で、友人を作り、仲間との連帯を育む環境が整っていない大学生活をスタートせねばならないことは、誠に申し訳なく、残念に思っています。
 しかし、新型コロナウィルスは、自分が感染していても気付かないうちに他人を感染させる特異な疾患です。しかも、個人によっては重症化し、死に至るリスクは決して低くありません。皆さんには、密閉・密集・密接を避け、マスク、手洗い、検温のルールをしっかりと守り、感染防止に十分に留意しながら、体調管理に万全を期して、辛抱強く、大学生活を送っていただくようお願いしたします。

 皆さんが楽しみにしていた講義の多くは、これまでオンラインによらざるを得ませんでした。入学後間もない皆さんには戸惑うことも多かったと思います。教える側にも沢山の苦労がありました。皆さんはもちろん教職員も初めての体験でありましたので、皆さんがどのように前期の授業を履修されたかを知るために、大学では学生全員にアンケート調査を致しました。全学生の3分の2の皆さんからの回答がありました。その内容は、オンライン授業、あるいはこれからの大学の教育方法を考える上でとても貴重なものです。私は、皆さんからの回答一つ一つを全て読ませてもらいました。
 オンラインでは、教員あるいは仲間の学生とのコミュニケーションがままならず、孤独を感ずること、画面を見ながらの授業への集中力の維持が容易でないことを感じつつも、感染を避けるにはやむを得ないことを理解し、リアルタイムやオンディマンドの動画配信を通じた勉学に新たな利点を見出し、積極的にチャレンジしてくれている姿も感じ取ることができました。皆さんがそうした試練を克服してここに集まり、後期を迎えることが出来たのは、皆さんと教職員の真摯な努力の成果であり、本学における今後の学びへの大きな資産となるものと確信します。
 後期は、これまでの経験を生かしつつ、オンライン授業の利点と対面授業の利点を出来る限り生かして、質の高い授業を実施できるよう全学をあげて懸命に取り組んでいるところです。他大学の見本となるような授業を県立大学から発信できるよう、皆さんと一緒になって大学として最大限の取り組みをしたいと思います。

 皆さんのこれまでの勉学はどちらかと言えば受け身であったと思いますが、大学生活ではそれは大きく変わります。与えられる場から、自らが情報や知識を集め、考え、判断し、発信する力を研く場になります。
 新型コロナの災禍の中で我々は日常でない多くのことに直面しています。人はお互いに助け合わなければ生きてゆけないことを痛切に感じます。また、人々の持つ多様性を共に認識し、尊重することの大切さを感じます。新型コロナの感染が収束した後においても、今起きている社会環境の大きな変化は続くでしょう。ICTの活用は隅々にまで入り込み、人と人との接触のあり方を変え、Office workからTelework、都市の集積から地方への分散、距離を感じさせない人との交わり方など、我々の生活スタイルを大きく変えるでしょう。こうした変化を敏感に感じ取り、変化をより良いものに変えるチャンスとすることが重要です。
 国際地域学部の皆さんは、国際関係、多様な文化、英語・露中韓の語学の勉学を通じて、国際的に幅広い視野と深い教養を身につけ、社会に出ることになりますが、コロナ感染防止を通じて世界に生じている変化を、皆さんが学ぶ専門領域に積極的に取り込み、新たな学術の発展と社会の進歩に役割を果たすことを、是非心がけて頂きたいと思います。
 人間生活学部の皆さんは、子どもの教育、食と栄養の管理を通じて、人間生活に密接な領域での専門家としてプロの道を目指すことになりますが、コロナ感染防止を通じて生じている大きな社会変化を、皆さんが学ぶ専門領域に積極的に取り込み、新たな進歩を生み出す役割を担って頂きたいと思います。
 国際経済学部に入学された皆さんはこの4月に創設された国際経済学部の栄えある第1期生です。1期生は今後後輩が入学してくるこの学部の基礎を作る立場にあり、皆さんに与えられたステータスは一生続きます。皆さんをお迎えし、教育を担当する教授陣は、皆さんと同じように国の内外から集結しました。それぞれの分野で大きな実績を上げている先生方による屈指の教授陣となっています。皆さんには、経済学、情報分析、語学を学び、豊かな教養と学術的基礎を身につけることにより、社会を深く理解する目を養って戴きたいと思います。
 今日は時間が限られているので具体的なお話は出来ませんが、皆さんが大学で取り組む知的営みは、多くの先人達が積み重ねてきた学術の蓄積の上に成り立っています。皆さんには、そうした巨人の肩に立って、さらなる高みを目指して学び、新しい発見をして欲しいと思います。

 コロナウィルスの収束する頃には新しい校舎が出来上がることになります。暫くの間は不自由をおかけしますが、さらに良い修学環境が提供されます。皆さんをお迎えする大学は、教職員一同、皆さんの成長を惜しみなく支援します。
 4年後に振り返った時、充実した学生生活であったといえるような県大生となってほしいと願って私の挨拶といたします。

 

 2020年10月
新潟県立大学学長 若杉隆平

 

令和2年9月7日  国際経済学部の皆さんへ
令和2年9月28日 人間生活学部の皆さんへ
令和2年9月29日 国際地域学部の皆さんへ